セルフサービスBI

データドリブンな企業風土をどう作る? リクルート、スカパーの事例に学ぶ「セルフサービスBI」セミナーリポート(1/4 ページ)

ここ1年ほどで企業のデータ活用に大きなトレンドが生まれている。業務部門が自らデータ分析やリポートの作成を行う「セルフサービスBI」だ。このほどITmedia エンタープライズ編集部が「セルフサービスBI」のセミナーを開催。スカパーやリクルートといった企業事例や最新のソリューションが紹介された。

» 2015年11月09日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 データは業務の副産物ではなく、ビジネスを進化させる主役。そんなテーマが叫ばれて久しいが、ここ1年ほどでそれを実現するアプローチは大きく変化している。それが「セルフサービスBI」の広がりだ。

 セルフサービスBIとは、業務部門が外部の専門家や情報システム部門に頼らず、自らデータ分析やリポートの作成を行うこと。分析のためのツールを扱うベンダーも増えてきており、今後、情報システムの担当者が業務部門から「セルフサービスBIを使いたい」という相談を受けるケースも増えるだろう。

 そこで、ITmedia エンタープライズ編集部は、2015年9月にセルフサービスBIをテーマにしたセミナー「『セルフサービスBI』でデータドリブン型企業をつくる方法」を開催。セルフサービスBIを活用するユーザー企業として、スカパー・カスタマーリレーションズとリクルートライフスタイルの取り組み、そして、セルフサービスBI活用を支えるソリューションが紹介された。

Excel+Access運用はもう限界!

photo スカパー・カスタマーリレーションズ 運用統括部マネジメントサポート担当 中島健氏

 セミナーの基調講演では、日本最大のチャンネル数を誇る有料多チャンネル放送「スカパー!」のカスタマーセンターを全国6拠点で運営する、スカパー・カスタマーリレーションズ(SPCC)の中島健氏が同社の事例を紹介した。

 SPCCではオペレーターが顧客からの申し込みや問い合わせに電話で対応し、番組案内や最適な視聴プランを提案しているが、特に近年は視聴経路の拡大や、商品数やキャンペーンの増加によりシステムが複雑化。カスタマーセンターもその対応のために、1000人以上のオペレーターを配備しており、月間約40万件もの問い合わせに対応しているという。

 同社は品質の継続的な向上や加入契約の増加を目的としてKPIを策定し、データ分析を行っていたが、その運用も限界に達してしまった。

 「今までは業務ごとに担当者が『Microsoft Excel』や『Microsoft Access』でデータをまとめていたのですが、分析には時系列、組織の単位、業務単位など、さまざまな視点があります。特に入電の単位では、いつ、誰から、どこに、なぜ電話がかかってきて、誰がどのように対応したのか、明細レベルのレコードデータを月間で数百万件も取り扱うことになります。拠点ごとのファイルを統合するにも時間がかかり、運用の負荷は極めて大きかったのです」(中島氏)

 Excelではメンテナンスに負荷がかかり、ビジネスのスピードについていけない。一方でAccessは扱えるデータに制限がかかり、ビジネスのニーズにそぐわない。もちろん、業務部門はプログラミング言語を自由に扱えるわけでも、データベース理論を正しく理解しているわけでもない。「これではリポート結果や分析結果を見て、考える過程にたどり着くまでに、力尽きてしまいます」と中島氏は振り返る。

「QlikView」を“データベース”として導入

 こうした問題をSIerに相談したところ、提案されたのが「QlikView」だった。社内に散らばっているデータを自動で吸い上げて取りまとめ、リポート配信を完全に自動化できるほか、属人的なデータマネジメントを解消し、組織的なデータマネジメントに移行できる――。こう話を聞いた中島氏は「正直なところ、半信半疑だった」という。

 「仮に自動化で人手が不要になり、コスト削減につながったとしても、一部の人しかQlikViewを使えないという新たな属人化が生まれるだけではないか……と思いました。2013年10月、その真偽を確かめるべくQlikViewをテスト導入し、検証を行いました」(中島氏)

photo QlikViewをSPCCで検証した結果

 テスト結果は良好で、今まで1カ月程度が限界だった分析が複数年対応が可能となり、リポート配信が自動化するといったコスト削減の効果もあった。経営層の承認も得て、2014年2月に10人分のライセンスを購入。業務部門でトライアルをする、いわゆる“スモールスタート”で取り組みを始め、属人化には“目をつぶる”形となった。

 SPCCにおけるQlikViewの使い方は、一般的な企業と比べると少し変わっているかもしれない。同社はQlikViewをデータの参照や定型リポートを作成するデータベースとして利用していたが、コスト面で一定の成果が上がったため、本格的にBIとしての使い方に挑戦することになった。

photo QlikViewのシステムと利用方法
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