日本のIT大手はAI技術のグローバル発信力を高めよWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年11月16日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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グローバルIT大手のエコシステムづくりを注視すべし

 一方、富士通も11月2日、NECと同様に30年以上前から培ってきたというAIに関する知見や技術を「Human Centric AI Zinrai」(以下、Zinrai)として体系化し、各種商品・サービスへの実装を開始すると発表した。

 Zinraiは、同社が取り組んできた「知覚・認識」「知識化」「判断・支援」、そしてそれらを高度化し成長させる「学習」などのAIに関する研究開発の結果である技術やノウハウを結集し、体系化したものとしている(図4)。

Weekly Memo 図4:富士通の「Human Centric AI Zinrai」構成要素一覧(出典:富士通の資料)

 同社は、その第1弾として、Zinraiの機械学習技術を組み込んだビッグデータ利活用ソリューションや、Zinraiの技術をクラウドサービスとして展開していく計画だ。

 AIを活用した同社の最近の実績では、2013年8月にZinraiの知覚・認識機能と学習機能を融合することで、ディープラーニングの活用による手書き文字認識認識技術を開発。2015年9月には中国語の手書き文字認識率において、人間の認識率相当を上回る96.7%を達成したという。

 また日立製作所は10月26日、独自開発のAI技術を活用して、企業の売り上げ向上やコスト削減といった経営課題の解決を支援する「Hitachi AI Technology/業務改革サービス」を提供を開始すると発表した。同社では先端的なAI技術および、それを活用したソリューションを「Hitachi AI Technology」と総称し、今回発表のサービスをその第1弾としている。


 こうしてみると、3社ともAIについては長年にわたって研究開発に取り組み、社内で蓄積してきた技術をここにきて体系化したり整備して、それらによるソリューション領域を明確にしつつあるようだ。さらに3社ともこの分野については、グローバル展開も強力に推し進めていきたいと考えているだろう。

 ただ、気になるのは、3社とも有力なAI技術を保持しているものの、その「見せ方」や「売り方」において、先述したグローバルIT大手のような発信力が乏しいように見えることだ。

 例えば、IBMやMicrosoftは自社のAI技術のAPI化をいち早く進め、クラウドサービスによって適用領域を大きく広げることに注力している。さらにGoogleに至っては、AI技術のオープンソース化に踏み出している。こうした形でパートナーやユーザーとのエコシステムをグローバルに深く広く、しかもスピーディに築き上げていこうとしているのである。

 NECの会見では、AI技術のAPI化について「IBMなどと同様の展開を考えている」(中村慎二ビッグデータ戦略本部長)との話もあった。おそらく富士通も日立も同様のことを考えているだろう。ただ、グローバルIT大手が今もの凄い勢いで進めているエコシステムづくりをもっと強く意識し、対抗策を打ち出していかないと、いつまで経っても後塵を拝することになってしまうのではないか。

Weekly Memo 記者会見に臨むNECの江村克己執行役員(左)と中村慎二ビッグデータ戦略本部長

 そうした強い危機感を込めて、「日本のIT大手はAI技術のグローバル発信力を高めよ」と申し上げておきたい。

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