久利氏はハイブリッドIT環境での運用管理について、従来型のIT、ハイブリッド、そしてマルチクラウドにも対応した「運用の一元化」、プロセスの自動化・効率化の推進などによる「費用の最適化」、IT管理者の作業を支援する「運用負荷の軽減」、監視・運用のシステムやプロセスの新規構築を不要にしたことなどによる「迅速な実現」、グローバルにどこでも標準化された運用を提供する「グローバル標準」といった点が重要なポイントだと説明した。
ITインフラの運用管理の現状については、IDC Japanが先頃、ITサービス事業者およびユーザー企業の調査結果を公表したので取り上げておきたい。
中でもユーザー企業の調査結果では、パブリッククラウドIaaSを導入する企業の「半数近く」が、その監視をIaaSの標準監視機能以外のツールで行うと回答しているという(図2参照)。
そのうえでIDCは、「多くのITサービス事業者がそうしたニーズに応えるために、自社の運用管理サービスでAmazon Web Services(AWS)やVMware vCloud Airをはじめとする主要なIaaSを管理できるように取り組んでいることが分かった」としている。
また、仮想化やマルチクラウド利用が進むことで、ITインフラの運用管理は複雑化しつつあると指摘し、次のような見方を示した。
「一部のITサービス事業者は、複雑化する運用管理を効率化するために、コグニティブ技術などを活用した自動化と、これを前提とする運用管理体制の変革にも取り組んでいる。こうしたと取り組みによって、顧客専任担当者の業務や障害切り分けといったフロントに近い業務を中心に、運用管理の自動化が進むと予想される。また、バックエンドの専門エンジニアが複数の顧客に対応するなど、エンジニアの効率活用も進むと考えられる」
さらに、今後はそうした運用管理の自動化への取り組みが広がっていくとの見方も示した。
同じユーザー企業でも調査の仕方に違いがあると思われるので一概に比較できないが、先に紹介したIBMの「70%」とIDCの「半数近く」という割合は、いずれもハイブリッドIT環境での運用管理を指しているものと見て取れる。ここではその割合の違いより、やはり今後はハイブリッドIT環境での運用管理のニーズがますます高まると捉えておきたい。また、IDCが「一部のITサービス事業者」という中には、コグニティブ技術に言及していることからIBMが入っているとみられる。
いずれにしても、ハイブリッドIT環境での運用管理のニーズが今後ますます高まっていく中で、ITサービス事業者にとってはまさしく腕の見せどころとなりそうだ。と同時に激しいサバイバル競争が繰り広げられることになるだろう。
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