第14回 「延命措置」で旧システムからDocker環境に移行する方法古賀政純の「攻めのITのためのDocker塾」(5/5 ページ)

» 2016年01月20日 07時30分 公開
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qcow2形式のイメージをtar形式に変換し、Docker環境に移行する

生成されたqcow2形式のイメージファイル「localhost-sda」は、移行先のKVMの仮想化環境で稼働させることができますが、今回はKVM仮想化環境ではなくDocker環境に移行します。

 KVMのゲストOSイメージをDocker環境で稼働させるには、このqcow2形式のイメージファイルをtarアーカイブに変換します。qcow2形式のイメージファイルをtarアーカイブに変換するには、virt-tar-outコマンドを使用します。さらに、変換したtarアーカイブファイルをDockerイメージとして登録するには、docker importを使います。


# cd /var/tmp/
# ls -lh
total 35G
-rw-r--r-- 1 root root  35G Dec 24 14:44 localhost-sda
-rw-r--r-- 1 root root 1.2K Dec 24 14:44 localhost.xml
# file localhost-sda
localhost-sda: QEMU QCOW Image (v3), 73372631040 bytes
# virt-tar-out -a /var/tmp/localhost-sda / - | gzip > rhel59web_dl365g1.tgz
# cat rhel59web_dl365g1.tgz | docker import - rhel:rhel59web_dl365g1

 登録したDockerイメージからDockerコンテナを起動し、Webサービスが提供できるかも確認してください。


# docker run -it --name rhel59web01 -h rhel59web01 rhel:rhel59web_dl365g1 /bin/bash

 実際には、ファイルサイズが大きいtarアーカイブをDockerイメージとして登録する場合、Dockerエンジンのパラメータなどの調整が必要な場合があります。Dockerエンジンで調整可能なパラメータ例などは、筆者が2015年12月17日に出版した著書「Docker 実践ガイド」に記載しています。今回のトピックである「KVMからDockerへの移行手順」についても記載していますので、一緒に確認してみてください。


 今回は、Dockerにおける旧システムからの移行手順の一例をご紹介しました。旧物理サーバ基盤や仮想化基盤における既存のIT資産をそのまま新しいシステムで利用したい場合は、ハイパーバイザ型の仮想化技術が威力を発揮しますが、Docker環境への移行には旧システムがどのような物理サーバ基盤で動いているのかを調査し、P2Vツールを使う、使わないにかかわらず、十分なテストを行う必要があります。x86サーバだけの環境であれば、一見トラブルなく簡単に移行ができそうですが、外部ストレージのデータの移行、Docker環境におけるネットワーク環境の整備など、必要に応じてハイブリッドクラウド基盤への対応なども検討する必要があります。

 さらに、メインフレームや古いUNIXシステムなど、非LinuxシステムからDocker環境へのアプリケーションの移行についても、専門の技術コンサルタントの助言を得ながら、移行可否を十分検討する必要があります。Dockerに限らず、旧システムからの移行は本一冊になるくらいの非常に根の深い話であり、ベンダーの専門家を交えた有償のワークショップなども存在します。ぜひそれらを活用し、Dockerへの移行計画を立ててみてください。

(第15回はこちら

古賀政純(こが・まさずみ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト。兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバーのSE及びスーパーコンピューターの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国ヒューレット・パッカードからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。現在は日本ヒューレット・パッカードにて、Linux、FreeBSD、Hadoop、Dockerなどのサーバー基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。Red Hat Certified Virtualization Administrator, Novell Certified Linux Professional, Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack, Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「Docker 実践ガイド」、「CentOS 7実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード。


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