IoTという新たな「産業革命」

オートバックスセブンが「2800万人」の顧客データを分析できた理由(1/2 ページ)

1980年代から会員カードの発行を始め、1990年代にポイント制度を導入するなど、顧客の属性や購買行動を基にしたマーケティング活動を早くから始めてきたオートバックスセブン。近年は約2800万人のデータを分析しているが、分析精度を高める取り組みとともに、データ分析基盤の整備も行ってきた。

» 2016年06月01日 08時00分 公開
[田渕聖人ITmedia]

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 「顧客のニーズに応える」。口にするのは簡単だが、ビジネスの現場で実践するのは難しい。最近は顧客の情報を分析して、売上を伸ばそうとする企業も多いが、うまくいかずに挫折してしまうケースも少なくない。

 そのような状況下で、顧客のデータ分析に成功しているのがカー用品専門店を展開しているオートバックスセブンだ。2013年にマーケティング部門を立ち上げ、2800万人の顧客データを分析し、顧客ごとに適したDM(ダイレクトメール)を送るといったマーケティング施策を実行している。

 従来は「RFM(直近購入日、来店頻度、購入金額)」をスコアリングし、顧客を5グループに分けてDMを出していたが、さらに細かく顧客の動向を把握するため、属性情報や車の情報、購買履歴などを基にクラスタ分析やセグメント分析を実行。分類した6つのクラスタや顧客個人の特徴に合わせて配信することで、マーケティングにかかるコストを約1億円削減しつつも、会員数や購入率を高めている。

photo スーパーオートバックスTOKYOBAY東雲の店内(出典:オートバックス)

非定型データ分析のため、IBMのDWHを導入

photo 同社 マーケティング部 オムニチャネル企画推進グループ 小竹理さん。ITの責任者として各システムやインフラの導入に関与してきた

 同社は分析精度を高める取り組みを行うとともに、データ分析基盤の整備も同時に行ってきた。既にテラデータのDWHを導入していたが、増え続けるデータに対してさらに高い分析能力が必要になり、2013年にIBMのNetezza(PureData System for Analytics)を導入したという。

 「各ユーザーに任意に分析作業をさせると、既存のDWHであるテラデータがパフォーマンス的に厳しくなる可能性があったため、主にユーザーが自由にトライアルできる非定型データを扱う新たな分析用DBの導入を検討しました。IBM以外の製品も検討しましたが、オラクルは費用対効果に見合わず、テラデータはユーザーが任意に分析作業を実行する操作環境としてはやや難しい面がありました。NetezzaはSQLも一般的でユーザーが使いこなせた点もよかったですね」(同社 マーケティング部 オムニチャネル企画推進グループ 小竹理さん)

 現在は表系(定型)のデータはテラデータ、非定型のデータはNetezzaと2台を使い分けて運用している。Netezzaを導入しユーザーが自由に使える環境を用意したことで、データ分析にかかる時間が半減するケースもあったそうだ。同社はこのタイミングで「IBM Campaign」など、マーケティングオートメーションツールも導入しているが、既に利用していた分析ツール「IBM SPSS」との連携を目指したためという。

 とはいえ、ツールやインフラを整えただけで成果が上がるわけではない。データを分析できる人やシナリオを考えられる人をどれだけ教育できるか、という事も大きな課題だった。

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