少子高齢化や人口減少など、地方都市が直面している社会課題は多い。富山県氷見市では、人工知能を搭載したロボットやIoTなど、ITを活用して課題に立ち向かう人々がいる。その先進的な取り組みについて聞いた。
能登半島の東の付け根に位置する富山県氷見市。「ひみ寒ぶり」や「氷見イワシ」など海の幸に恵まれ、多彩な祭事や古墳、そして日本の朝日百選に選ばれた「氷見海岸」やユネスコの「最も美しい湾クラブ」に加盟した富山湾など観光資源も多い。近年は「立山黒部アルペンルート」に代表される山岳観光に注目が集まり、県全体で外国人観光客が増加しているという。
そんな氷見市も1980年代をピークに人口は減少し続け、高齢者の割合が35%を超える(2015年12月31日現在、氷見市統計より)など、他の地方中小都市と同じく、少子高齢化や人口減少といった問題に直面している。
しかし最近では、人工知能を搭載したロボットやIoTなど、最先端のITを活用して社会課題を解決しようという動きがある。2012年に氷見市に移住し、さまざまなプロジェクトにコーディネーターとして関わる川向正明さんに話を聞いた。
富山大学附属病院の眼科では、診療科長である林篤志教授が主導してソフトバンクの人型ロボット「Pepper」を導入した。その用途は、インフォームド・コンセント(医療行為の事前説明)における医療従事者の業務効率化。現在、白内障手術の事前説明をPepperにさせているという。
白内障は、80歳を超えるとほとんどの人に何かしらの症状が現れる、ある種“身近”な病気で、国内では年間140万件ほどの手術が行われている。手術は比較的短時間で済むため、病院では1日に何件もこの手術を行うが、そのたびに患者に30分程度の事前説明を行う必要がある。これをPepperが担うことで、病院の人手不足を補おうというのだ。
既に手術の事前説明をタブレットで閲覧できるシステムなどはあるが、林教授は人型ロボットが話したり資料を見せたりすることで、手術を受ける人がより自然に説明を受け入れられると期待しているそうだ。また、相手が機械ならではのメリットもあると川向さんは言う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.