ケミカル大手の三井化学は、NTTコミュニケーションズと共同で生産システムへのAI活用について検証に臨んでいる。AIを生かすためのITインフラの展望も含めた取り組みとは?
近年のIT業界でトレンドになっている「AI」(人工知能)と「IoT」(モノのインターネット)は、特に産業界でその活用による効果が期待されている。さまざま企業で活用方法が検討される中、ケミカル大手の三井化学と通信大手のNTTコミュニケーションズが取り組みを紹介してくれた。
三井化学は、機能化学品や機能樹脂などの開発・生産を手掛ける。国内で5つの工場を稼働させており、生産システムの安定稼働を高めるべく、長年にわたってデータ活用を進めてきたという
エンジニアリングセンター設備技術グループ PSE技術チームの十河信二氏によると、生産システムの運転データについては、温度計や圧力計、流量計といったセンサの情報を毎秒収集し、生産システムの自動制御に利用される。システムのオペレーターは、センサなどの情報を監視、確認しながら、状況に応じて運転操作を行う。
これらの記録は1分周期で「PIシステム」に数年にわたって保管する。また、収集したデータを解析し、生産管理、品質管理、運転管理、設備管理の目的に活用している。例えば、生産管理のためのデータはツールによってERPシステムへ取り込むデータを自動的に作成しているとのことだ。
生産システムの状態を把握するセンサでも、上述の計測機器に加え、「ソフトセンサー」という技術を活用する。工場では正常な稼働を維持することが最も重要なことから、プロセスを監視して適切な制御をしなければならないといい、計測機器だけでは把握するのが難しい情報をソフトセンサーで集める。具体的には、各種計測機器の情報をもとに統計計算モデルを構築し、これによって成分測定を行うという。
同社では、こうしたデータを生産設備の信頼性や運転効率の向上のために活用する。従来は蓄積しているデータや過去に発生した事象をもとに、設備の点検や保守などの計画を立案、実施していたが、突発的に発生する事象にも未然に備えられれば、信頼性や効率性のさらなる向上が期待される。
そこでAIとIoTの活用に注目して、その可能性の検証に取り組み始めた。
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