企業の「デジタル変革」を導く2つのカギーー人工知能、そして“共創”

NECの年次カンファレンス「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」が開幕。ビジネスのデジタル化をどのように実現するか、をテーマに社長の新野氏が講演を行った。そのカギとなるのはAI、そして他社との共創なのだという。

» 2016年11月02日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
photo NEC 代表取締役執行役員社長 兼 CEOの新野隆氏

 IoTやAIによって、ビジネス拡大への期待が高まっている昨今、「ビジネスのデジタル化」や「デジタル改革」といったキーワードをテーマに掲げるITベンダーは多い。それはNECも例外ではなく、同社の年次イベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」では、新野社長が「デジタル産業革命」をテーマに基調講演を行った。

 デジタル化によって、産業の構造や企業のビジネスモデルが大きく変化するといわれる中で、「NECはAI(人工知能)、コネクティビティ、セキュリティという3つの技術で、ユーザー企業のビジネスモデル変革を支援していく」と新野氏は強調した。

 特にAIについては、この7月に技術ブランド「NEC the WISE」を策定し、ソリューションを次々と製品化している。1つはセキュリティ関連製品の「NeoFace Image data mining」だ。大量の顔画像を分析し、事前に学習用データを読み込ませなくとも、複数のビデオカメラに映った同一人物を特定できる。

 もう1つはコンタクトセンター用のソリューション「自動応答ソリューション」。高度なテキスト分析により、大量のQ&Aデータから最適な回答案を抽出し、ユーザーに自動的に回答したり、オペレータによる回答を支援するものだ。シミュレーションによっては、問い合わせへの回答案が9割以上正解だったケースもあったそうだ。

 こうしたAI技術は既にさまざまな企業で導入されているが、講演の中では特に“予測”に焦点を当てた事例が目立った。

 アサヒビールでは、商品種別の出荷(販売)データや気象情報、カレンダーといったさまざまなデータを組み合わせ、短期間に商品の販売数を予測している。これにはデータ内に混在する規則性を自動で発見する“異種混合学習技術”が使われており「商品の鮮度を追求するための施策であり、予測の誤差が1%未満に収まることが多い」(新野氏)という。

photo アサヒビールの事例。さまざまなデータから高精度な商品の需要予測を行うという

「やりたいことが不明確」から始まるビジネスが一般的に

 NECは10月末にGEとIoT分野で包括的な提携を結ぶなど、大学や国、企業とのパートナーリングを積極的に進めている。GEとの提携は「NECが持つITと、GEが持つOTの技術を持ち寄り“共創”を進める」(新野氏)としているが、こうしたパートナー戦略に注力するのも、デジタル産業革命に向けた動きだという。

photo GEを始め、NECはさまざまなパートナー提携を進めている

 「以前は、お客さまがやりたいことがあって、それをどうICTで実現するかを考えるのがわれわれの仕事だった。しかし、今は“やりたいことが明確ではない”状態からビジネスが始まるケースが増えている。お客さまが持つ課題をワークショップを通して発見し、共に新たな価値を作り出していく。ビジネスのアイデア出しから立ち上げ、そして運用までトータルに対応するケースが一般的になっていくだろう」(新野氏)

photo ビジネスのアイデア出しから立ちあげ、そして運用までをトータルで担うモデルが今後は増えていくと新野氏は話す

 現在インドでは、NECが地元の開発公社と共同で企業を設立し、全ての物流を可視化するシステムを構築している。極度の渋滞や運転手が突然いなくなるトラブルが頻発するなど、物流の安定が課題になっているそうだ。そこで全ての舗装路にセンサーを仕込むなどして、輸送車の動向を把握し、輸送リードタイムの短縮や在庫削減、生産計画の精度向上を狙うのだという。

 社会全体が抱える課題から議論を始め、企業のビジネスを変えていく――これが同社が考える、新たな“価値創出”のモデルケースといえる。講演の最後に、新野氏は「今後、デジタル産業革命は非常に速いスピードで進んでいく」と述べた。その中で同社が目指す社会貢献を行うためには、ITの視点だけでは足りず、さまざまな他社と協力して課題と価値を発見し続けることが必要になるのだろう。

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