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» 2016年11月18日 07時55分 UPDATE

「ムーアの法則」を超える新世代コンピューティングの鼓動:コンピュータの限界を変えるための3つの視点 (1/3)

膨大なデータの活用を妨げになる現在のコンピュータの問題はどうすれば解決できるのでしょうか。今回はそのために必要な新しいコンピュータのアーキテクチャについて考えてみます。

[三宅祐典(日本ヒューレット・パッカード),ITmedia]

 前回は今のITを取り巻く問題として、多くの電力を消費するコンピュータの数をどんどん増やしていかなければいけない状況にあることをお話ししました。今回はこの問題を解決するために私の所属する会社が開発中の新しいコンピュータのアーキテクチャを紹介します。

60年間変わらないアーキテクチャ

 現代のコンピュータは、階層化された記憶領域とその間を銅線が結ぶアーキテクチャです。これはコンピュータの誕生から約60年間変わっていません。この階層化された記憶領域間を頻繁にデータが行き来することが、電気を消費する一因です。

60年間変わっていないコンピュータの構造(略図)

 記憶領域が階層化されている理由は2つあります。1つは、DRAMで構成されているメインメモリは電源を失うとデータが失われてしまうため、それを永続化する仕組みが必要だからです。もう1つはDRAMの容量単価が高いためメインメモリにそれほど大きい領域を詰めないことから、全てのデータをより安価な外部記憶装置に置き、必要な部分だけメインメモリに置いて処理をするのが一般的だったためです。

 外部記憶装置は、電源が消えてもデータが失われない反面、メインメモリに比べるとデータの移動は非常に低速です。したがって外部記憶上のデータはほとんどの場合、一度メインメモリにロードされてから処理され、必要なら外部記憶に戻されます。この時にデータの移動が発生します。メインメモリと外部記憶の容量の差が大きければ大きいほどこの間の移動が多く発生します。データの移動にはCPUも介在しますので、移動が頻繁に発生すれば、それだけリソースを余計に消費してしまいます。

 特にデータベースの領域ではインメモリ技術がもてはやされています。インメモリデータベース自体はかなり昔からありますが、エンタープライズ分野で本格的に採用され始めたのは「SAP HANA」の登場によるところが大きいでしょう。その後、SQLServerやOracle Databaseもインメモリ技術を本格的に採用しています。

 インメモリデータベースが速いのは、アクセス速度が速いメインメモリに全てのデータを置いているからです。永続化のために最終的には外部記憶装置へデータを書きだすものの、少なくとも読み込み時のデータの移動はありませんから、この部分にかかる外部記憶の待ち時間もデータの移動にかかるコストも削減できます。ですが、メインメモリの構成部品となるDRAMは、定期的にリフレッシュしないとデータを保持できません。この構成を取る限りは常に電気を使用し続けなければならず、劇的な省電力化は望めません。

 それではいっそうこと、この記憶領域を1つにしたら――という発想が出てきます。電源が落ちてもデータを失わないメモリがあったらどうでしょうか。さらに、その容量単価がDRAMより圧倒的に安ければどうでしょうか。このようなメモリがあれば、記憶領域の階層化を排除できます。こうした不揮発性メモリの技術は今後数年でどんどん世の中に出てきます。これが新世代のコンピュータにおけるアーキテクチャの1つめのキーポイントになります。仮に「ユニバーサルメモリ」と呼びましょう。

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