コンピュータの限界を変えるための3つの視点「ムーアの法則」を超える新世代コンピューティングの鼓動(3/3 ページ)

» 2016年11月18日 07時55分 公開
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さらば汎用的CPU

 メモリ主導型のコンピューティングでは、CPUは部品になります。ですからCPUはメモリ上に格納されているデータに対してどのような操作をしたいのかという目的に応じて、必要な機能に特化した物へ付け替えればよいという発想に転換できます。例えば、データをあるルールでデータを並べ替えたければ、並べ替えが得意なCPUをその作業時に付ければよいのです。

 こうすれば、CPUにはコンピュータの中心としての役割が必ずしも必要なくなります。今のCPUは中心にあるがゆえに融通がきかず、どのような処理も高度に処理する能力を有している必要があるため、汎用的になっています。中心でなくなれば、シンプルになり、目的に特化することで省スペース化、省電力化が可能になります。これが新しいアーキテクチャの3つ目のキーポイント、「目的特化型コア」の採用です。

新世代コンピューティングアーキテクチャ。目的特化型CPUコア、ユニバーサルメモリ、フォトニクスで構成される

 この新しいアーキテクチャは、ユニバーサルメモリと目的特化型のCPUコアをフォトニクスで結ぶことで、消費電力の圧倒的な削減を実現できるようになります。また、データの移動をはじめとする多くの無駄を省いてCPUのパワーをより効率的に使えるようになります。大量のデータも一つの階層に全て格納できます。アクセススピードはメモリとほぼ同じですから、必要なデータを瞬時に参照できるでしょう。前々回の航空機の例のように、過去のあらゆる事象のデータを格納し、そのデータを利用してシミュレーションしたシナリオのデータをさらに格納したり、あるいは新しい条件を加えて計算し直したりといったことができるようになるのです。

 繰り返しますが消費電力は圧倒的に少なくなります。小型化すれば電力事情の厳しい場所――例えば、自動車の中にも大容量記憶媒体を設置できるようになります。集められたデータはその場で分析され、必要な情報だけを外に出すといったことが可能になるでしょう。

 今回は、新世代コンピューティングのアーキテクチャについて説明しました。私の所属する会社ではこのアーキテクチャ開発のプロジェクトを「The Machine」と呼んでいます。次回は記憶領域の問題について、もう少し詳しく説明しましょう。

三宅祐典(みやけ ゆうすけ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社の「The Machineエバンジェリスト」。Hewlett Packard Enterprise(HPE)の中央研究所「Hewlett Packard Labs」が認定するエバンジェリストであるとともに、普段はミッションクリティカルなサーバ製品を担当するプリセールスSEとして導入提案や技術支援を行う。ベンチマークセンターのエンジニアとしてHP-UXとOracleデータベースの拡販支援やサイジングを担当後、プリセールスエンジニアとして主に流通業のお客様やパートナー様の提案支援を経験し、現在に至る。

趣味はスキー、ダイビングといった道具でカバーできるスポーツ。三宅氏のブログはこちら。


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