別府市医師会と富士通、在宅医療でのモバイル業務アプリの制御技術を実証

医師・看護師・介護士・薬剤師などが連携して患者をケアするために、共有する医療情報への安全な自動アクセスを実現する技術を開発。別府市医師会などが、在宅医療現場で実証実験を行った。

» 2017年01月31日 08時30分 公開
[ITmedia]

 大分県の別府市医師会と富士通研究所、富士通は1月30日、在宅医療業務におけるモバイルアプリケーション制御技術を開発・実証したと発表した。

 富士通によれば、在宅医療の現場では近年、医師・看護師・介護士・薬剤師などの多職種間で患者の医療情報を共有して医療の質を高めるために、タブレットなどのスマート端末を活用したシステムやソリューションが積極的に導入されつつあるという。2015年に高齢化率が31.3%を超えた別府市は、高齢化先進地域として医療と介護がスムーズに連携し、地域における効率的な医療の提供体制を整備している。

 従来の在宅医療では、体温や血圧などのバイタル情報や治癒の経過を記録した写真、関係者への申し送り事項といった患者の医療情報をモバイル端末で安全に扱うために、必要な人物が必要な時にのみアクセスして、その後は速やかにアプリケーションを閉じ、資格のない人に情報を見られないようにするといった運用が求められていた。

 その際、利用者IDや患者ID・パスワードなどを何度も入力しなければならず、誰が・いつ・どこで・どの範囲の情報にアクセスできるかという情報管理ルールに従って確実に運用していく必要がある。このため、多忙な在宅医療の現場では大きな負担になっていたという。

 富士通研究所は、患者の医療情報の表示・非表示、共有範囲、利用するアプリケーションなどを自動的に変更するモバイルアプリケーション制御技術を開発。これにより「ポリシー管理機能」と「ポリシー制御機能」を実装できるという。

 ポリシー管理機能は、ネットワーク上にある医療情報に、誰が・いつ・どこで・どの範囲にアクセスできるかを定義したポリシーを、管理者があらかじめ一括して設定できるもの。ポリシー制御機能は、利用者が持つ資格識別ビーコンや患者宅に設置したビーコンの情報と、あらかじめ設定したポリシーに基づき、アプリケーションや提示される情報を自動的に切り替えるもの。患者宅に訪問した際は自動的に患者の医療情報を表示し、患者宅から離れると端末内の情報を自動的に非表示または消去することが可能になるという。

Photo モバイルアプリケーション制御技術の利用イメージ

 今回開発した技術を富士通の「地域医療ネットワーク HumanBridge EHRソリューション」に適用したシステムを構築し、別府市医師会と共同で実証実験を実施。訪問診療・訪問看護業務は2016年3月〜9月に別府市内の在宅医療現場にて、処方・調剤業務は同9月〜12月に別府市内の診療所・調剤薬局にて実証を行ったという。

 実証の結果、必要時に利用者の職種に応じて自動的に医療情報を表示し、それ以外では自動的に医療情報を非表示にすることで、個人情報を確実に秘密保持するとともに、情報にアクセスする際のIDやパスワードなどを入力する手間を削減できることを確認。管理者によるポリシーの管理については、担当者が数十分間の学習を受けるだけでスムーズに設定・管理できることを確認したという。

 今回開発した技術によって、安全性と利便性を両立したスマート端末による医療情報の共有が実現可能となり、在宅医療の現場でICTを活用した多職種間のタイムリーな医療情報の共有が促進することで、患者の症状やケア方針などの申し送り事項の共有に要していた時間を月22.5時間削減でき(看護ステーションにおける作業時間:富士通研究所推計)、患者のケアの質向上に寄与することが期待できるとしている。

 今後、別府市医師会では、業務の効率化に向けて先進的な技術の導入を進めていくという。

 また富士通は、富士通研究所が開発した技術を活用して2017年中に訪問診療システムの製品化を目指し、富士通研究所はモバイルアプリケーション制御技術の機能拡充やヘルスケアのさまざまな分野での活用について検討していくとしている。

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