人とAIの共存で進化する「おもてなし」

神田の居酒屋にロボットが来た日――“飲みニケーションロボット”の作り方【総力特集】人とAIの共存で進化する「おもてなし」(2/4 ページ)

» 2017年03月07日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 ゲイトとしては、宣伝を予約サイトに依存する体質を変えたいという狙いもある。予約サイトが乱立する中、新規客の獲得に広告費をかけるのが通例だが、店側としては、新規客だけにお金をかけるのではなく、リピーターになってくれる客にもお金をかけたい。

 業界全体で競争の激しさが増す中、リピーターを増やさないと生き残れない――。この取り組みは、店のブランド価値を高め、“自力”で生き抜く店舗を目指すための試みでもある。

“飲みニケーションロボット”の作り方

photo ヘッドウォータース 人とロボット事業部 事業部長 塩澤正則さん

 このプロジェクトは、ゲイトとヘッドウォータースの社長が知り合いだったことがきっかけで始まった。SynAppsが2016年3月にリリースされ、顔認識機能を実装していたことから、ロボットを使って来店客の顔を認識できないかということで、2016年5月にプロジェクトが始まったという。

 ヘッドウォータースはコミュニケーションロボット「Pepper」での導入実績はあったが、店内に設置するにはPepperは大きすぎる。今回Sotaを選んだのは、見た目の可愛らしさもさることながら、「居酒屋のテーブルに設置できる大きさ」「顔認識をするなら人型がいい」という点を重視したためという。

 サイズはジョッキグラスよりも少し大きいくらいで、卓上での存在感もちょうどいい。その他にも、シンプルな作りで比較的安価であること、稼働部が少ないために壊れにくいといった点もメリットだ。

 その後、両社が協力して開発を進め、薄暗い居酒屋の中でSotaのカメラが客を認識できるのか、飲み会が行われる2〜3時間を人間と過ごすにはどんな機能が必要か、といった要件を固めていった。半年くらいで開発からテスト、そして実運用にまでこぎつけた。

 このシステムの大きなポイントは、Sota自身が何かをするわけではなく、ユーザーがアプリを通じてSotaに指示を出すところにある。

 「Pepperの場合は胸にタブレットがありますが、Sotaにはなく、コミュニケーションを取る手段が音(声)とカメラの2種類になります。居酒屋内はノイズが多く、音声入力は厳しい。そのためスマートフォンアプリを使うことにしました」(ヘッドウォータース 人とロボット事業部 事業部長の塩澤正則さん)

 音声入力を避けたのは、Pepperで苦戦した経験があったためだ。音声認識はマイクの性能が大きく影響し、Pepperでもミスをする。スマートフォンであれば、口元との距離を近づけられるがロボットはそうもいかない。そこで、「言葉を発する部分は人がスマートフォンアプリで操作する」「登録されている顔を見つけたらあいさつする」というシンプルな機能となり、仕掛けではなく、会話の内容を作り込んでいった。

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