金融取引の仕組みを大きく変えるとして注目される「ブロックチェーン」。しかしこの技術は、業種や業界の枠を超えたビッグデータを支える、共通基盤ソリューションとしても期待されている。その理由と世界各国の最近の動きをまとめた。
昨今、金融業界で注目を集めている「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」は、業種や業界の枠を超えたビッグデータを支える、共通基盤ソリューションとしても期待されている。
ブロックチェーンを端的に説明すると、見知らぬ人同士がイベントの共有記録を信頼することを可能にする技術だ。この共有記録(分散型台帳)は、データの提供、運用、管理を一元的に行うデータベース管理システム(DBMS)としての機能を持たないが、トランザクションを検証するために、コンピュータを利用するネットワークの全参加者に配布されるので、第三者による仲介を必要としない。これにより、より迅速で安価な、そして改ざんが難しいトランザクション処理が可能になる。
ブロックチェーンは、各ブロックの参照番号や生成された時間、過去のブロックへの戻りリンクなどメタデータを含む「ヘッダ」と、実行されたトランザクションの量、相手先のアドレスなどデジタル資産や命令文の検証されたリストを含む「コンテンツ」の2つから構成される。
このブロックチェーンの特徴をしっかりと理解するには、ネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションサービスという3つの層に分けて考えると全体像が見えてくる。
ネットワーク層から見たブロックチェーンは、ピアツーピア(P2P)型の分散ネットワークインフラより構成され、データストレージも各ノードに分散する。プラットフォーム層では、強固な暗号化、電子署名、コンセンサスメカニズム(ノード間での合意形成)、分散型元帳などを特徴とする。
そしてアプリケーションサービス層から見ると、トランザクション、電子記録、リアルタイム処理など、ブロックチェーンならではの特徴を生かした、オープンソースベースのアプリケーションソフトウェアをさまざまな分野向けに開発、実装してサービスを提供できる点が特徴だ。
もともと、金融分野の仮想通貨である「ビットコイン」の基盤技術として発展してきたブロックチェーンだが、今後は法務(スマートコントラクト)、医療(電子カルテ、ゲノムデータ)、物流(ロジスティクス管理)、公共(電子投票)など、金融以外の分野への適用が期待されている。
ビッグデータの観点で言えば、ブロックチェーンは、P2Pネットワークでつながる各ノードにデータを保存する形態をとるため、自ずとデータ容量(Volume)やパフォーマンスには限界がある。むしろ、暗号化/電子署名、コンセンサスメカニズム、分散型元帳といった特徴を生かしながら、ビッグデータの収集から分析、保存、廃棄に至るまでのライフサイクル管理プロセスを補完、支援する技術機能と捉えた方が分かりやすいだろう。
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