そこから、Webマーケティングはデジタルマーケティングと同義ではないことを辛抱強く訴え、小規模に導入し、小さなサイクルを回しながら失敗と成功を積み重ねてきた、1人の有能な人物のおかげで、様子見だった多くの人間が理解者に宗旨替えをして、万事ハッピーエンド……となるわけではありません。
組織は「1人の有能な人物」がいなくなっても続き、成果を上げ続けなければならないからです。マキャヴェッリが訴えているのは、“端緒を切り開く労力と、それを維持する労力は別”ということだと私は解釈しています。
DMPを知ってもらうまでは、とにかく何度でも打席に立って、1本でもヒットを打つことが必要です。求められるのは「打率」ではなく「安打数」です。ですが、DMPを文化として組織に根付かせるには、打席に立って一定の確率でヒットを打つことが求められます。そのため、今までと同じやり方を続けていては、うまくいかないのが当たり前なのです。
つまり、人が代わったことが原因ではなく、「DMP運用のフェーズが変わり、自分に求められている役割が“維持”になっていることを理解せず、今までのやり方を変えない」ことが原因で、成果を上げられなくなっているのではないでしょうか。
よく、創業者は「草創」のリーダーシップ、2代目は「守成」のリーダーシップが必要だといわれています。
新しいものを創り出す「草創」で出会う困難と、新しく創り出したものを守り育てる「守成」でぶつかる困難は異なります。今回の例に当てはめると、自ら率先してDMPを導入するためのリーダーシップと、浸透が一通り終わったDMPを守り、永続させるリーダーシップや施策は別だと考えた方がよいでしょう。
私自身、変化が激しいといわれるベンチャーの世界で、「アドテク」という言葉が誕生する前の2007年から一貫してプロダクトを開発してきました。プロダクト自体は13年目を迎えます。
これまで幾度となく荒波にもまれてきましたが、生き残れた理由の1つに、草創と守成のバランスがあると感じています。多くのプロダクトが「激しい変化」を理由に事業を撤退、転換してきましたが、「守成」という視点を持って物事を進めれば、結果は異なっていたかもしれません。
もしあなたが「これからはDMPを組織に根付かせる」と腹を決めたら、前任者の否定だと陰で非難をされようとも、止めるべきことは止め、始めるべきことは始めるべきでしょう。結果さえよければ、手段は常に正当化される――。マキャヴェッリも「政略論」の中でこのように論じています。
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