クラウドシフトで“脱・売り切りモデル”の組織へ 大型組織変更に見るMSの覚悟(後編)Microsoft Focus(1/2 ページ)

クラウドシフトで“脱・売り切りモデル”の組織体制へとかじを切った日本マイクロソフト。後編ではパートナー戦略や中小企業、デバイスメーカー支援に関わる組織体制の変化を紹介する。

» 2017年08月26日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
Photo 日本マイクロソフト 平野拓也社長

 日本マイクロソフトが、2017年7月1日からの新年度スタートに合わせて大規模な組織変更を行った。日本マイクロソフトにとっては、2003年7月以来の大規模な組織変更だ。その基本的な考え方は、ライセンス販売モデルから、クラウドによるコンサンプションモデルに最適化した体制への転換だ。

 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「従来の組織は、パッチワークを当てたような組織だった」と表現したが、これはライセンス販売モデルに最適化した組織をベースにして、クラウドビジネスを行っていたことを指す。だが、新たな組織では、クラウドビジネスを前提とした組織へと大きく変化した。

 エンタープライズ部門における新たな組織について追った前編に続き、後編では、パートナー事業本部や、新設されたインサイドセールス事業本部、コンシューマー&デバイス事業本部などの役割を探る。

クラウド時代ならではのパートナー戦略を推進するパートナー事業本部

 今回の組織改革の中で、エンタープライズ部門の大規模な変革とともに大きな柱となるのは、パートナー事業本部の再編だ。

 パートナー事業本部は、グローバルで、「One Commercial Partner」と呼ばれる組織の日本版であり、B2Bを対象にビジネスを行う全てのパートナーを、この組織が担当することになる。

 従来の組織体制では、日本マイクロソフトにとってメインストリームとなる中堅中小企業向けのパートナーをゼネラルビジネス部門が担当。この他、エンタープライズ部門が大手顧客向けパートナーを担当し、パブリックセクター統括本部が公共分野向けパートナーを担当するという組織体制になっていた。

 また、ISVパートナーは、デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部が担当するという仕組みになっていた。

 つまり、従来の組織体制では、パートナーの特性に合わせて担当部門が異なるという仕組みだったのに対して、新たなパートナー事業本部では、全てのパートナーを1つの組織で担当し、パートナー施策も1つの組織で推進する。これもクラウド時代の組織づくりの象徴といえる。

 従来のオンプレミス時代におけるライセンスビジネスは、基本的には企業規模によって導入規模が決まっていた。従業員数やビジネス規模が大きな企業は、PCやサーバの導入規模が大きく、それに伴い、パートナー支援策も変える必要があった。

 だが、クラウド時代においては、大手企業も中堅中小企業も最新のクラウドテクノロジーを活用でき、「導入」するライセンスモデルから、「利用」するコンサンプションモデルに移行する。この観点から捉えると、大手企業と中堅中小企業の消費量には差がなくなってくる。

 それどころか、クラウドを駆使したサービスを展開するスタートアップ企業の方が、大手企業よりも消費量が多いという事態も普通に起こり得るだろう。言い換えれば、クラウド時代には、顧客の規模を背景にしたパートナー支援策が通用しない環境が生まれているのだ。

 さらに、クウラド時代においては、日本マイクロソフトとパートナー、あるいはパートナー同士のソリューション連携もこれまで以上に活発化する。その連携をドライブするために、パートナーを担当する組織を一本化するというのは理にかなっている。日本マイクロソフトの平野拓也社長が「日本マイクロソフトが、パートナーのソリューションを一緒になって販売するための組織になる」と表現するのもそのためだ。

 こうしたクラウド時代に合わせた組織の再編が、今回のパートナー事業本部の誕生につながっている。

新事業部で中堅中小企業やデバイスメーカーを支援

 一方で、新設された組織の1つが、インサイドセールス事業本部だ。この組織は中堅中小企業を対象にしたテレセールス部門である。日本マイクロソフトではこれまでも、長年に渡ってテレセールスによるビジネスを展開してきたが、基本的には外部企業を利用した委託ビジネスとしていた。

 今回の組織再編では、従来のゼネラルビジネス部門にあったテレセールスの統括組織をインサイドセールス事業本部として独立させ、同時に日本マイクロソフト社員によるテレサービス部隊として事業を行うことになる。ここにはテクニカルセールスと呼ぶ技術スキルを持った社員も配置する。

 組織の陣容は約100人規模で、新規雇用を中心とした体制づくりを進めるという。海外では、新たな組織体制への移行により、人員削減が取り沙汰されているが、日本では、新たな雇用を生むなど、人員削減の影響をほとんど受けていないといえる。

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