社内外にさまざまなつながりを持ち、数多くのプロジェクトを進める大久保さんは、みずほにとっては「よそ者」といえる存在だ。
20歳の頃に留学先の米国で起業し、PayPalなどの新しいサービスにもいち早く触れた。その経験から、帰国後は日本の金融業界でITと英語を武器に勝負していくことを決めたという。その後は、独立系SIerでメガバンクのシステム企画、開発、運用に関わった後、ネットバンクでは、日本の銀行で初めてAWSの導入を果たし、2016年4月にみずほに入社した。
みずほ銀行では、立ち上がったばかりのデジタルイノベーション部に所属。当時4人だけのプロジェクトチームで、初めての中途人材だったという。デジタルイノベーション部は、その後2年で兼務や出向者も含めて100人規模の組織に成長した。
大久保さんの今の仕事には、プライベートな立場やこれまで培ってきた人脈も大いに生きている。例えば、自社の役員や省庁のキーパーソンに直接話を持ちかけたいときは、前職時代に参加した、各社のCIOレベルのコミュニティーでのつながりがきっかけになることが多かったという。
また、2016年にはFinTech関連の有識者と共に、一般社団法人金融革新同友会「FINOVATORS」を立ち上げたが、これが“みずほの人“として動くのが難しいような活動も可能にしている。例えば、FINOLABやFINOVATORSが行う勉強会やイベントであれば、競合といわれるような銀行の担当者たちも一堂に会することができる。法制度の改正などを行政機関などに働きかける際も、この非営利組織の立場が役に立つ。
自社だけではなく、社会全体に役立つことを――。さまざまな企業を渡り歩いてきた大久保さんだが、どんな組織にいてもこの信念を貫いてきた。この利他的なスタンスが、多くの人とつながり、そして多くの人をつなげているのだろう。オープンイノベーションというのは、まさにこういった姿勢のことを指すのではないか。
そんな大久保さんの夢は「日本を金融で世界一の国にすること」。そのためにできることは何でもしたいと話す。企業の枠やルールにとらわれずに行動できる人材と、それを事業戦略としてサポートできる企業。規制に負けずに、変革を起こすためのパワーはこういうところにあるのだろう。大久保さんの夢はまだ始まったばかりだ。
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