コールセンターでのWatson導入や店舗へのPepper設置など、業界の中でも先進的なIT活用で注目される「みずほ銀行」。同社は増え続けるデータへの対策やオムニチャネル施策の重要性も認識しており、5年以上の歳月をかけてデータ分析基盤の刷新を続けている。
近年、銀行業界のマーケティングに大きな変化が起きている。メガバンクを中心に「O2Oビジネス」や「オムニチャネル」への対応が急速に進んでいるのだ。新たなサービスの実現に向けて、金融機関がITベンダーと協業するといった例も出てきている。
オムニチャネルとは、顧客と企業がつながる各チャネルを組み合わせ、より質の高いサービスを提供するマーケティング施策だ。裏側のオペレーションやデータ管理をチャネル間で一元化することで、より顧客のニーズに応えられると期待されている。
銀行がオムニチャネルに注目するのは、銀行と顧客の接点が増えたことが背景にある。昔は銀行窓口で対面の会話をするくらいだったが、現在はコールセンター、ATM、オンラインバンキング、SNSと“非対面”型の顧客接点が中心になりつつある。今や顧客1人がいくつものチャネルで銀行と関わるのが一般的だ。
各チャネルにおける顧客行動を分析し、彼らのニーズを正確に把握できないか――。そんな目標を掲げ、「みずほ銀行」も古くからオムニチャネル施策に注力していたが、データ分析基盤がその障害になっていたという。
「特に最近は商品やサービスの種類が増え、データの管理や分析が難しくなっています。そして何より、オンラインバンキングに代表される、Web経由の顧客接点が生み出すトランザクションデータの増加に、処理が追い付かなくなってしまいました」
こう話すのは、みずほ銀行でデータ分析の設計を担当する家村育民さんだ。このほかにも、データ分析にプログラミングベースのエンタープライズBIを使っていたため、ツールの利用者が約500人と限られていたことや、データ分析手法が増えるに従って、不必要にデータマートの数が増えるといった問題も抱えていたという。
そこで家村さんが所属するチームは2010年、ハードウェア製品の保守切れに合わせてデータ分析基盤の刷新を決定。「高速なビッグデータ処理」「便利さと正確さの強化」「分析データの追加」「アーキテクチャの最適化」という4つの方向性を立て、実現までのロードマップを作成したという。
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