AIで女性の顔の“魅力”も数値化――東大で研究中の「魅力工学」とは?プレゼンスライドのデザインもアドバイス(2/2 ページ)

» 2018年06月06日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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 被験者に課題を出したところ、最初は文字が並んだだけのスライドが出てきた。まずは、人間の目線がスライド内のどの部分に行きやすいかをヒートマップで示す「Visual Importance Map(VIM)」を使い、被験者にその結果だけを渡して、修正をしてもらった。

 そして1回目の修正後に、人工知能にスライドのスコアを100点満点で判定してもらった。このシステムは点数化に加えて、スライド内で改善すべきポイントを、ぼんやりとヒートマップで表してくれる。この結果を先述のVIMの結果とともに被験者に渡し、2度目の修正を加えてもらうのだ。

 その結果、3度目に出てきたスライドは写真も入り、人工知能によるスコアも大幅に高まった。この他にも、同様の実験を「じゃんけん」の説明といったお題で行い、いずれもスコアが高まったという。「全くの素人でも、AIによる恩恵を受けられることが分かる事例」と山崎氏は強調する。

photo 人工知能のサポートで、プレゼンスライドのデザインがどんどんと良くなった事例

 この他にも、CTRが高まるような“刺さる”Web広告を判定する人工知能を開発したり、InstagramなどのSNSに投稿した写真に対して、反応が良くなるようなタグを自動で選ぶ人工知能を考えたりと、多岐にわたる分野で研究を行っている。とはいえ、ディープラーニングを中心とした人工知能は、得点化はできても、その要因まで導き出すことができないのが現状だ。今後は理由の解明に向けた研究も進めていくという。

大学生が「ディープラーニング」を学ぶ時代

 山崎氏の研究室には、博士課程の学生から学部生まで幅広い年代のメンバーがいるが、最近では、大学生がディープラーニングを学ぶ姿も珍しくなくなってきたという。

 「最近では大学3年生が『ディープラーニングを教えてほしい』と言ってくる。私自身、マイクロソフトなどの協力を得て、人工知能開発の授業を行っているが、電気電子工学科3年生の120人のうち、約半数が志望したので驚いた」(山崎氏)

 授業の中では、学生自身に課題を設定して解かせるような演習も行っているとのことだが、FXでもうけるためのAIや、タレントの画像を基にして新たな“美女”の画像を生成するAI、自然言語処理を使い、文章から自動でQ&Aを生成するAIなど、非常に高度なAIを開発してくるそうだ。

photo 大学3年生のチームが作った「自然言語処理を使い、文章から自動でQ&Aを生成するAI」。授業内でコンテストを開いたところ、最優秀賞に選ばれた

 彼らの多くは、Microsoft Azureのディープラーニング仮想マシン(DLVM)を利用している。学生向けのプランであれば無償で使える機能も多く、設備投資にかかる費用もゼロで済む。その上、「Azure ML以外にも、ChainerやTensorflowといったOSSライブラリも使えるところがうれしい」と山崎氏は話す。もちろん、Amazon EC2やGoogle Cloud Platformなども使っているとのことだが、特に予算がひっ迫しがちな場面でAzureは有用なのだという。

 山崎氏は大学生だけではなく、中学生や高校生に向けたAIのワークショップも行っているとのこと。このように人工知能教育の場が広がっていけば、“AIネイティブ”といえるような世代が登場する日も遠くないのかもしれない。

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