会議では「今、どの階層について話しているのか」を見失うケースがとても多い。それを防ぐには、この議論の問題を解決する5階層を意識することが重要だ。
5階層のうち、どこの議論をしているのかをよく観察してみると、Aさんは「困り事=課題(第2階層)」の話をしているのに、Bさんは「施策(第4階層)」の話をしている、ということに気付けるようになる。これができるとずいぶん違う。
議論の階層がズレていることが分かったら、当然、話している階層を合わせればよい。ここでのポイントは、下の階層から合わせていくことだ。
下の階層の認識が合っていないと、それより上の階層の認識は合わない。「事象=起こっていること(第1階層)」の理解がズレていたら、「課題=困り事(第2階層)」の理解が合うわけがない。
逆に言えば、この階層のズレが分かってくれば、かみ合わせの悪さを軌道修正できる。
こんな視点で冷静に議論を観察できるようになる。ここで適切な投げかけをすれば、かみ合わせはよくなる。その実例として、次に、あるプロジェクトでの会話例を挙げる。
あるプロジェクトで「ペーパーレスの推進」という施策が打ち出された。しかし、その是非は賛否両論だった。
こうなると、どこからどう議論すれば、みんなの思いがまとまるのか、見当がつかない……。こんなときこそ、問題解決の5階層の出番だ。5階層を基に、どこに不満があるのかを確認していく。
例えば、「ペーパーレスありきの議論が気に入らない」と言っている人は、第4階層の「施策」がまだ出尽くしておらず、「ペーパーレス以外にも施策があり得るのではないか」と主張しているのだ。だから、課題や原因に立ち戻り、あらためて施策のアイデアを洗い直すところから仕切り直すと、ズレが解消できるかもしれない。
「工数が増える」と言っている人は、第5階層の「効果」に疑問を持っている。この場合は、得られる効果を丁寧に議論していく必要があるだろう。
また、「他に施策があるのではないか?」と言っている人と、「ペーパーレスで逆に工数が増えるのではないか?」と言っている人は、違う階層を気にしていることが分かる。これを一緒に議論しても、解消できない。1つずつ、階層を分けて議論していくのがよいだろう。
このように、議論には構造があるということ、問題解決の場合は5層構造になっているということを理解できているだけで、ずいぶんと議論のかみ合わせはよくなるはずだ。
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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