脱ITIL、CASBも検討――マルチクラウド時代のITサービスマネジメント、東京海上日動の選択(1/2 ページ)

クラウドサービス利用の増加により、管理タスクの増加に苦しんでいるという東京海上日動。この課題を解決するために、同社はどのような対策を考えているのだろうか。

» 2018年06月20日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 セキュリティやコンプライアンスに厳しい大企業でも、クラウドを利用するのが一般的になりつつある今、数々のクラウドサービスをどう管理し、運用するかというITサービスマネジメントが重要になってきている。

 保険業界大手の東京海上日動火災保険(東京海上日動)でも、クラウドサービスの利用が激増し、セキュリティをはじめとした運用で苦労しているという。人口動態やグローバル経済の変化や、自然災害の大規模化など、ビジネス環境の変化とともに、ITに求められる要件も変わってきているという同社。彼らはどのようにして増え続ける管理タスクに対処しているのだろうか。

「金融自由化」でシステム障害が激増、ITSMの重要性

photo 東京海上日動システムズ エグゼクティブオフィサー 角田仁氏。IBMの年次イベント「Think Japan」で講演を行った

 東京海上日動のITサービスマネジメントの歴史は20年ほど前までさかのぼる。1998年4月の外国為替取引の自由化に端を発する、金融業界における規制緩和や撤廃(いわゆる「金融ビッグバン」)により、数多くの保険商品が登場した。その結果、システムが複雑になり、システム障害も激増してしまった。

 経営課題となったシステム障害を減らすため、システム子会社である東京海上日動システムズでは、2001年からITILの導入を開始。2006年にはISO20000を取得し、2008年に行われた基幹システム再構築に合わせて、さらにITサービスマネジメントを強化したという。

 これで管理の課題が解決したかというとそうではなく、近年では、クラウドサービスなど、他社のサービスを利用することが増えており、管理工数が増えているそうだ。

 「昔は“安かろう悪かろう”といったサービスも多かったのですが、最近では運用も含めて品質が高まっているので、社内でも『いいサービスは積極的に使っていこう』というスタンスになっています。2011年と比べると、クラウドも含めたシステムの委託件数が3倍近くになりました」(東京海上日動システムズ エグゼクティブオフィサー 角田仁氏)

photo 金融自由化でサービスが増加したことをきっかけに、システム障害も増えてしまった
photo 東京海上日動では、クラウドサービスをはじめとした外部サービスの利用が非常に増えている

 クラウドサービスは、運用を手放せるため、インフラ部門の負荷を減らせるというメリットがあるものの、ITサービスマネジメントという観点では課題もいくつかある。角田氏は「運用品質の低下」「サービスのロックイン」「セキュリティ面の不安」の3つを挙げる。

 「例えば、IPAから脆弱性が発表されたような場合、インハウスであれば数時間でパッチ適用などの処理を行うが、外部サービスの場合は問い合わせから始めなければいけません。タイムラグがあるし、サービス数が多くなれば、それだけ負荷が大きくなります」(角田氏)

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