多い時には1カ月に1回のペースで新商品を発表し、自社Webサイトでさまざまな画像や動画などを駆使するハーゲンダッツにとって、自社環境でプロモーション動画が見られなくなるようなトラブルは致命的だ。ブラウザのウィンドウサイズを縮小するという臨時の解決策はあったが、根本的な容量不足は変わらない。
もともと2019年にVDIの再構築を予定していた同社だが、竹下氏は「経営陣に率直にトラブルについて打ち明け、本来の時期を早めて再構築を決めた」と話す。
「前回の失敗からモニタリングは重要だと感じていたので、再構築を決めた後、まずは全社員のPCに常駐ソフトを入れ、アプリケーションの使用度合や作業の頻度を1カ月にわたって測定しました」(竹下氏)
測定結果を基にVDI環境を構築しようとしていた矢先、竹下さんは取引先のSIerからNVIDIAの仮想化ソリューション「NVIDIA GRID」の話を聞き、「十分にリソースの余裕を持った環境を構築できる」と思ったという。提案されたプランは予算ギリギリだったが、「エンドユーザーである社員に快適な環境で仕事をしてもらいたい」と、導入を決断した。
その結果、2018年8月にNVIDIA GRIDでVDIを刷新。VDIへのログインをはじめ、ExcelやWord、PowerPointといったアプリの起動、Webブラウザの表示などの動作速度が改善したという。
「情シスへのヘルプ依頼も激減し、従来のVDI構築時に比べてヘルプ対応の負荷も軽くなりました」(竹下氏)
同社では、現在Windows 7でVDIを使っているが、2019年にはWindows 10への全社切り替えを目指しており、構築中のBCP(事業継続計画)基盤にもVDIを適用する予定だ。また、PCが故障した際、動作中のOSやアプリを止めずに別のPCに異動できるVMwareの仮想化支援ソフト「vMotion」にも、2018年内に対応しようとしている。
「Windows 10に移行すると、グラフィックスのリソース消費もある程度増えるため、グラフィックスを使ったリッチコンテンツを展開する企業として、GPUによるグラフィックスリソースの確保は重要だと考えています」(竹下氏)
手痛い失敗を経験したものの、同社では「社員によるPCの乗り換えやアップデートなどの処理や管理が圧倒的に楽になり、出張先や自宅でも必要なときに作業ができる」といったVDIのメリットを生かすべく、失敗から学んだ教訓を生かして自社に合ったVDIの再構築を成功させた。
企業が新たなソリューションを導入する際、できるかぎり無駄なコストを削る努力は確かに必要だ。しかし、竹下さんの語った「自社のニーズを正確に把握する作業に、時間と費用を割いておくべき」というアドバイスは、多くの企業にも当てはまるのではないだろうか。
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