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» 2004年02月05日 20時22分 UPDATE

特集:サーバー型放送で何ができる?(後編)メタデータの使い道、使い方

サーバー型放送の目玉の1つといわれるのが、“メタデータ”を活用した放送サービス。番組に付加された情報をもとに、ユーザー個々のニーズに合わせたテレビの視聴方法が提案できるというものだ。しかし、それをビジネスに結びつけて考えたとき、新たな課題が見えてくる。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 サーバー型放送の1つの目玉といわれるのが、“メタデータ”を活用する各種の放送サービスだ。メタデータに含まれる番組情報をもとに、個々のユーザーニーズに合わせたテレビの視聴方法が提案されている。しかし、それをビジネスに結びつけて考えたとき、新しい課題が見えてきた。

 来年開始される予定のサーバー型放送では、メタデータと呼ばれるコンテンツの情報を付加した上で番組を送出する。データの内容は、番組の識別ID(コンテンツID)をはじめ、番組のジャンルやEPGデータ、演出家や出演者の情報、そして権利管理関係(コピー保護、アクセス制御、課金情報)と多岐に渡り、番組の製作、送信、管理、アーカイブなどさまざまな場面において、コンテンツの検索や選択に利用できるという。

 では、実際にサーバー型放送ではメタデータをどのように活用するのだろうか。

メタデータの活用例

 NHKが提案しているものとしては、まず「シーンナビゲーション機能」が挙げられる。まるでDVDのチャプターのように、番組のなかの各場面をチェックしておき、例えば「スポーツイベントで日本人選手のシーンだけを抜き出して視聴する」といった“ハイライト視聴”が可能になる。

photo NHK技研が開発したコンテンツの例。蓄積したニュース番組に対してBMLのメニュー画面を設け、「1分間で見る」「3分間で見る」「10分間で見る」「ニュース項目を見る」といったように、複数のダイジェスト版を用意している

 また、その応用例として“追いつき視聴”がある。たとえばテレビのスイッチを入れたとき、既に番組が途中まで進んでいたらーーそれまでに蓄積してある部分からハイライトシーンだけを抜き出して再生して行き、進行中のストリーム放送に追いつくという寸法だ。このほか、予め複数のストーリーを持つ番組を蓄積しておき、選択によって再生していく“マルチシナリオ視聴”なども研究中だという。

 一方、あらかじめ入力したユーザー情報と番組のメタデータをもとに、受信機側で蓄積する番組を取捨選択すること(フィルタリング)も可能だ。ソニー「コクーン」などのPVR機能にも似ているが、メタデータは現在のEPGデータよりも詳細であり、さらに細かい設定ができるようになる。「ユーザーの嗜好を(受信機が)学習し、効率よく蓄積する。各メーカーが他社との差別化を図るうえでも有効な機能といえる」(NHK放送技術研究所)。

photo サーバー型放送のイメージ(出典はNHK放送技術研究所)

 一方、「サーバー型放送のファイル型送信なら、時間軸変更によるファイル伝送サービスにくわえ、番組にデータファイルを多重するといったサービスが可能になる」というのはフジテレビジョン。同社は2003年9月に、朝の情報番組「まざましテレビ」を素材にしたサーバー型放送システムのデモンストレーション実験を行っている。

 やはりBMLで構成されたメニュー画面には、「占いカウントダウン」「きょうのわんこ」といった同番組の人気コーナーが並び、さらにミニゲーム「きょうのわんこを探せ」、MP3音楽配信「MP3 Magic Mushroom」、MPEG-1によるビデオクリップ配信「The Video Magic Mashroom」といったオリジナルコンテンツも揃えていた。

 本来なら時系列に沿って視聴するテレビ番組をインデキシングしておき、簡単な操作で頭出しが行える。イメージとしては、マルチメディア時代のCD-ROMコンテンツに近い。なお、メニュー画面などのユーザーインタフェースに関しては現在「サーバーP」で検討が進められており、BMLのほかHTMLなども候補に挙がっているという。

運用上の課題、ビジネス上の課題

 蓄積した番組とメタデータを活用したそれぞれの実験は、いずれも新しいテレビの視聴方法を示唆したものだ。しかし、紹介した事例はいずれも研究開発中のものであり、まだまだ課題が多いのも事実だ。技術的な課題はいずれクリアされるだろうが、より深い部分にも問題が残されている。

 たとえば、メタデータを“誰が付加するのか”という素朴な疑問がある。NHK放送技術研究所の久保田敬一氏は、「例えばニュース番組にメタデータを付加するとき、ニュースの内容を一番よく知っている記者が行うのが一番望ましいだろう。しかし、現実には難しい」と指摘する。確かに記者は事件には詳しいが、放送技術に関しては素人。まして、毎日の取材活動の中で、製作の仕事を加えるのは難しい。

 1つの解決策として、同氏は第三者がメタデータの付加を担当する可能性についても触れた。「コンテンツそのものは放送局が電波で送信し、メタデータは別の事業者がインターネット経由で提供することも可能だ」。ただし、明確なビジネススキームが成り立たなければ、あえて参入する事業者が現れる可能性はない。久保田氏は、この点も課題として挙げている。

 事実、有料放送事業者のWOWOWは、メタデータをコンテンツIDや課金情報など一部に限定する形で検討を進めている。WOWOW経営企画部の柳川良文参事は、メタデータの活用について「コメントが難しい」と前置きしたうえで、率直な意見を聞かせてくれた。「メタデータを使ってユーザーに使い勝手を向上させるという試みは有意義だ。しかし、それはお金をもらえるモデルではないと思う」。

 メタデータの活用は、放送という“マス”メディアが、利用者個々の“ニッチ”な要求に応えるという、もともと二律背反の要素を抱えた試みだ。それだけに、ビジネス上の可能性を疑問視する声が上がるのは当然ともいえる。技術先行の試みを、どこまで利益に結びつけられるのか。その解答を見つけたとき、初めてメタデータが活きてくるはずだ。

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