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» 2004年07月30日 00時17分 UPDATE

景気が良くなると地上波のアニメが減る?

スカパー!は7月29日、コンテンツ開発および投資事業を行うための企画会社「スカパー・ウェルシンク」を設立した。地上波のテレビ局に代わり、アニメなど優良コンテンツに「より上流で」投資を行うのが目的。スカパー!の重村一社長がそのビジネスモデルを説明した。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 スカイパーフェクト・コミュニケーションズは7月29日、コンテンツ開発および投資事業を行うための企画会社「スカパー・ウェルシンク」を設立した。新会社は、アニメなど優良コンテンツに対して「より上流で」投資を行うのが目的。同日行われた決算説明会の席上で、スカパー!の重村一社長がそのビジネスモデルを説明した。

 重村氏の言う「上流」とは、コンテンツの企画・制作段階という意味だ。スカパー・ウェルシンクではまず、アニメ系専門チャンネルと組み、アニメ制作の初期段階から資金協力を行う。

早い段階で制作会社との協力関係を築くことで、マーケティングとライツマネジメントの両面で主導的な立場を確立。もちろん、出来上がったアニメの最初のウィンドウ(流通手段)はスカパー!の専門チャンネルとなり、さらに「スカパー!BB」のようなブロードバンド配信や、DVDパッケージの販売といった2次利用、3次利用も進める。コンテンツのマルチユースにより、同社の権利ビジネスも拡大するという寸法だ。

 「スカパー!加入者320万人にCATVを入れると、600万から700万世帯のリーチがある。優良コンテンツをフリーテレビよりも先に放映できる構造を作れば、当然、権利のリターンも増える。今後のペイテレビの方向性を示すことができるだろう」(同氏)。

 また重村氏は、景気の回復に伴い、地上波放送ではアニメが減少し、相対的に専門チャンネルの重要性が増すと予測している。「おそらく、地上波テレビでは今後、アニメや時代劇が大幅に減るだろう。少子化という大きな理由もあるが、景気が回復するとテレビ局はスポット依存型の広告に転換するからだ」。

 周知の通り、民放は広告収入に完全に依存したビジネスモデルとなっている。子どもが減ると、子ども向け番組にお金を出すスポンサーも減少するのは当然だ。一方、深夜枠など大人をターゲットにしたアニメは増加しているようにも見えるが、それは“不景気ならでは”の現象であるらしい。

 景気が悪いと、地上波放送では“PT番組”や“GRP”(Gross Rating Point:延べ視聴率)ベースのCMが増える。PT番組とは、1つの番組を複数のスポンサーが共同で提供する形の番組のことで、仮にその番組の視聴率が低くても、複数の番組に提供した広告主は投資リスクを分散できる。

 GRPは、CMを流した時間の視聴率を累積した数字を指す。たとえば、平均視聴率5%の時間帯で10回のCMを流したとすると、GRPは50%という具合。時間枠を買い上げること(タイムスポンサー)はできないが、広告効果は上げたい広告主は、CMを流す時間や回数ではなく、GRPを求める傾向にある。

 ただし、GRPは放送局の利益効率に直結している。仮に広告主が500%のGRPを要求した場合、平均10%の番組なら50回のCMが流せば済むが、平均5%の番組では100回流さなければならない。限られた放送時間の中でやりくりしている放送局は、少しでも視聴率の高い番組でCMを流したい。このとき、固定ファンが多く、たとえ深夜でも一定の視聴率を稼いでくれるアニメは「タイムスポンサーこそ付きにくいが、GRPを引き上げてくれる」(重村氏)重要なコンテンツというわけだ。

 しかし、景気が良くなると、テレビの時間枠を買い取ってくれるスポンサーが増えてくる一方、タイムスポンサーの付きにくいアニメは不利になる。そこで、現在の地上波放送局に代わり、新会社がアニメ等の制作をバックアップするというのがスカパー!の戦略だ。スカパー・ウェルシンクの設立は、加入者の増加ペースが鈍化しているスカパー!が、独自コンテンツの積極的な開拓という“攻め”に転じたことを示している。


 スカパー・ウェルシンクの資本金は1000万円。代表者にはスカイパーフェクト・コミュニケーションズ執行役員常務の渡邊純一氏が就任する。なお、事業会社化のスケジュールについて重村社長は「確約はできないが、8月中をメドに事業会社化したい」と話している。

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