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庵野監督、“埼玉のパルテノン神殿”で「地下の魅力」を語るレポート(1/2 ページ)

» 2004年11月22日 09時51分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 どうやら、今年は“地下”がアツいらしい。

 シールドマシン出発式日比谷共同溝見学会には、定員を上回る数の応募があったそうで、11月21日に首都圏外郭放水路の庄和排水機場で行われた「地底文化フォーラム」にも、250人の定員を大幅に上回る400人以上の応募があったそうだ。

 “地下好き”の筆者としても見逃せないこのイベント、さっそく出かけてみました。

首都圏外郭放水路って?

 首都圏外郭放水路とは、千葉・埼玉の両県を流れる中川、倉松川、大落古利根川らの水量が台風などで上がった際に、その水を、流れにゆとりのある江戸川に放水するための地下水路だ。

photo 画面中程左の赤い線が首都圏外郭放水路の位置

 埼玉県北東部を流れる中川流域は、周りを利根川、江戸川、荒川に囲まれた起伏の少ない地形であることに加えて、近年、住宅地が急速に拡大してきたエリアであり、毎年のように浸水被害が起きていたという。

 放水路は全長6300メートル。大落古利根川、幸松川、倉松川、中川、18号水路からの水を貯水する5本の立杭と、それら結ぶ地下水路、最終的に水を江戸川へ放水するための排水機場(庄和排水機場)で構成されている。

 2006年度内の完成を予定しているが、既に2002年の6月から試験通水が行われている。今年10月の台風22号の際には、これまでならば床下・床上浸水となっていた雨量にもかかわらず(埼玉県杉戸町で総雨量173ミリ)、床上浸水はゼロとなり、浸水被害の低減に力を発揮したことが確認されている。

埼玉の地下に存在する“パルテノン神殿”

 フォーラムの舞台となったのは、庄和排水機場のメイン施設と呼べる調圧水槽。これは177(全長)×78(幅)というサッカーコート2面分にもなる巨大な地下水槽で、高さは18メートル。25メートルプールにして約900杯分という約18万トンの水が貯水可能で、大雨の際には放水路を通ってきた水がここを満たした後、ポンプによってくみ出され、江戸川へ放水される。

photo 調圧水槽。

 これだけの広さがなければ、ポンプを利用するための水量が確保できないほか、緊急停止時に発生する、逆流による水圧を調整できないのだという。

photo 柱の数は59本。堂々としたその姿はアテネのパルテノン神殿に例えられているとか

 しかし、これだけ大きな施設を地下に建造すると、地下水によるアップリフト(揚圧力)で水槽が浮かんでしまう(!)可能性もあるために、天井部の土砂や柱のコンクリートなどが重しの役目を果たしている。

photo 一見何の変哲もないグランドだが、この下には調圧水槽が

 ちなみに、放水路全体の貯水量は約67万トン(完成時)で、これまでに約63万人の人が建設に携わり、約140万トンの土を掘り出している。

photo 調圧水槽と隣接している第1立杭。直径32メートル、深さ65メートルというスペースシャトルがすっぽり入る大きさ

「“ヒトが作ったモノだ”という感じのする建造物にひかれる」(庵野氏)

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