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“リビングシアター”構築のポイント劇場がある暮らし――Theater Style(3/5 ページ)

» 2005年01月21日 21時28分 公開
[本田雅一,ITmedia]

麻倉氏:「ところでサブウーファーはヤマハのYST-SW800だけど、こいつは映画向きに音を圧縮して出すため、迫力というか振動を作り出すという点ではとてもいい。しかしその分、とてつもなく遅く(遅れて)音が出てくる。でもこの部屋では比較的自然に鳴っていますね」

photo ヤマハのサブウーファー「YST-SW800」

 実はその理由は簡単。サブウーファーの距離情報入力を、実際の距離よりも1.5メートルほど遠くインプットしているからだ。このため、低域の立ち上がりがやや速くなり、スピーカーの特性と相まってちょうどいい感じになっている。とはいえ、ヤマハのサブウーファーが音楽向きじゃない事は明らか。

 ところがSACDやDVD-Audioの場合、ロックやポップス系にはサブウーファーチャンネルを使っているものも多いが、クラシックやジャズ、ポップス系でも音質重視のソフトにはサブウーファーやセンターチャンネルを使っていないものが多い。もちろんCD再生ではサブウーファーを使わない設定にしてある。だから音楽再生よりも映画重視で、迫力の演出のためのサブウーファーにしたわけだ。

反射光処理とスクリーン

 音の話が先行したが、フロントプロジェクタを用いたホームシアターの構築という意味では“光の処理”がとても重要だ。どんなに画質の良いプロジェクターを使っても、スクリーンに余分な光が当たっていると色純度とコントラストが下がる。

 従って窓からの光をどのように遮断するか、またスクリーンから反射した光が、さらに天井などに反射してスクリーンに戻る反射光の処理などが問題となる。しかし、これらの光の処理はインテリア性と表裏一体で、専用室ならともかく普段の生活を過ごすリビング空間のインテリア性と両立するのは難しい。

麻倉氏:「本田さんのシアターではホワイトマットの120インチスクリーンを使っていますから、幕面から均等に多方向に光が反射しますね。床もテーブルも暗い色ですからスクリーンへの再反射は無視できるでしょう。ダイニング側には何もないですし、窓側も大きな濃い色のウッドブラインドがあるため無視できます。問題は天井で、アイボリーの凹凸がある壁紙ですからここで再反射が起こってスクリーンに光が戻ってしまう。画質を重視するなら、ここはパール処理のスクリーンを使うのがいいでしょうね」

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 スクリーン選びの基礎に関しては別記事があるため、そちらを参考にして頂きたいが、パールスクリーンはプロジェクターの光に対して正対する方向に反射するため、プロジェクターを天吊り設置している我が家のような環境では天井に光があまり反射せず、よってそこから戻る光も少なくなる。逆にプロジェクターをテーブル置きする場合には、回帰特性のあるビーズスクリーンを使うことで同様の効果を得ることが可能だ。

 ただしプロジェクターの光は平行に入るわけではないため、パールやビーズのスクリーンでは、中央と周辺部で明るさが違って見える「ホットスポット現象」が目立ちやすく、複数の視聴者がいる場合は視野角の問題も発生しやすい。また、発色に関してもややクセがある印象が強く、我が家では素直な色と広視野角が得られるホワイトマットにしたわけだ。この場合、天井に黒っぽい布を貼るなどすれば再反射でスクリーンに光が戻ることを防げるが、リビングルームでそれをやってしまうとインテリア性に著しく影響する。

 こうしたこともあって、製品の画質評価を行う際には80〜90インチ程度のサイズでスクリーンの下端に投影し、天井からの影響を最小限にしている。こうして天井からの距離を十分に取ると、天井に暗い色の布をかけても外しても、さほどコントラストが変化しなくなる。

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