デモンストレーションは、出力フォーマットごとに行われた。たとえばFULL-LRでは、2台のSTBに2台の液晶プロジェクターを接続。雪が降る山林の風景をスクリーンに投影してみせた。
偏光メガネを通してみると、ちょうど窓から外の風景を見ているような奥行きを感じる。「設定で“飛び出す”ようにも調節できるが、映像は本来、(撮影している)カメラより手前に何かが飛び出してくるものではない。自然で目にもやさしい“奥行き”のほうを重視した」(同社)。
今回は、権利上の問題もあって映画を見せることはなかったが、Z軸を抽出する技術の性格上、奥行き感を意識して撮影された映画作品は「向いている」という。「もともとZ軸を持つCGはもちろん、映像クオリティの高い最近の実写映画とは相性がいい。とくに、チャン・イーモウ監督の“LOVERS”や“HERO”は、とても綺麗に見えた」。また、最近の緻密なアニメ作品もOK。宮崎駿監督作品などが代表例だという。
一方“不向き”なものもある。たとえば「サザエさん」や「ちびまるこちゃん」など、線画に近いものはZ軸の計算が困難になるらしい。「それなりにオブジェクトの前後関係は出るが、商業的には難しい。このため、あえて“不向き”と言わせてもらった」(同社)。
「3D MAVE」は、アミューズメント施設やイベント関連、博物館などの業務用途に販売される予定だ。しかし、両社はコンシューマー映像機器への展開も視野に入れており、「単機能でコンパクトなSTBを手頃な価格帯で発売したい」としている。具体的な価格は示されなかったが、「家庭用なら、10万円は切らないとダメだろう」(マクニカ ブリリアント テクノロジー カンパニー、マーケットクリエーション統括部長の岩崎広司氏)。
一方、ハイビジョン映像への対応も進めている。マーキュリーの江良氏によると、今回の技術は解像度が高く、また前面投写型プロジェクターのように、視聴者と画面に距離があるほど立体感を出しやすいという。
「ハイビジョンソースの場合、解像度が上がるぶん、奥行きのステップ数を増やすことができる。既に(ハイビジョン処理)回路としてのロジックは完成しており、1080iで“ゆっくり”と動いている状態。残る問題はスピードだけだ」。
近い将来、3Dハイビジョンなどという豪勢なホームシアターが登場するのかもしれない。
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