左上の電源ボタンを押せば、現在表示している画面に応じた各種のメニューを呼び出せる(Windowsで右クリックしてプロパティを呼び出す感覚だ)。再生中ならばフォルダスキップやサウンドモード(プリセットイコライザ)、画面パターンなどの設定が行える。プリセットイコライザは9種類用意されており、自分でカスタマイズすることもできる。
なお、マルチコントロールの上下ボタンは2段階に押し込むことができる。一段階押し込むと1項目動き、深く押し込むと高速にスクロールする。押し込む動作に対するレスポンスも高速で、操作時にストレスを感じることはない。
肝心の音質だが、付属のイヤフォンで視聴してみたところ真っ先に感じたのが“分解能の高さ”だ。音がひとつひとつはっきりと聞こえて非常に心地よい。特定の一部音域を強調するわけではなく、あくまでもナチュラルな音質で、ピアノの余韻や肉声の“厚み”も十分に味わうことができる。きらびやかに高音を再生するタイプの製品と比べると一見地味なように聞こえるかもしれないが、ソースのニュアンスを失わず、万人が楽しめる音質といえる。
各種のイコライザを適用しても音の方向性が大きく変わることはなく、あくまでもちょっとした味付けとして効果にとどまっているところにも好感が持てる。付属のヘッドフォンを筆者が普段使用しているSennheiserのMX400やソニーのMDR-EX51とも交換してみたが、音の印象が一変するということはなく、ヘッドフォンの特徴をダイレクトに感じる結果となった。
本製品に搭載されている「NEWクリアデジタルアンプ」は信号伝送をフルデジタル化することでクリアな再生を実現しているというほか、電源回路にはセンシングアンプを搭載することでD/A変換時にローパスフィルタ部の逆起電流から発生するノイズを解消、S/N比を改善しているという。
また、シャーシ素材には軽量かつ剛性の高い非磁性ステンレス合金を使用し、電源やオーディオの各回路をシャーシを介して設置することで、ノイズを低減し、音像の定位感が向上したという。こうした「オーディオ機器」としての作り込みが、高い音質を実現していることは間違いないだろう。
質感の高い本体や美しい液晶からは国産メーカーらしい作りの良さを感じるほか、インタフェースもシンプルで操作しやすい。音質についてもオーディオメーカーらしいナチュラルかつ丁寧な音という印象で、個人の好みもあると思うが、万人にアピールする製品といえるだろう。
ただし、改善を求めたい部分もある。ひとつは「Kenwood Media Application」が転送機能しか持っていないこと。既にPC内部にライブラリを構築しているならばシンプルに転拠だけをおこなうこの仕様は歓迎できるかもしれないが、この製品が初めてのデジタルオーディオプレーヤーとなるユーザーにとってはやや敷居が高いと言わざるを得ない。WMP10を使うという選択肢もあるが、WMP10はポータブルプレーヤーの母艦としては使いにくい部分が多すぎる。
もうひとつが価格だ。同製品の市場想定価格は4万5000円前後で、ライバルと目されるiPod Photo(30Gバイト)とは約6000円、gigabeat F 20とは約1万円の価格差がある。本製品の音質が良いことは間違いないが、これだけの価格差を逆転するアピール材料としては少々心もとない。
しかし、同社製ミニコンポやカーオーディオとの接続も可能となっており、単純なHDDプレーヤーとしての枠にとどまらないほか、“プレーヤー”としての本質を見つめ直した音質重視の姿勢は高く評価されてしかるべきだ。これからHDDプレーヤーの購入を検討している人には是非一度視聴をお薦めしたい製品だ。
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