――最近ではソニー製のデジタルオーディオプレーヤーも人気のようです。
「ソニーの製品もいい製品だと思います。どんなニュアンスの音になるかは、音決めをする人の感性ですが、iPodは非常にアメリカ的と言うか欧米文化のにおいがする音で、ソニーの音はエキゾチックというか日本的な音です。“演歌っぽい”というと言い過ぎかもしれませんが、どんな音楽を聴いてもこぶしの回るような感じがするんですね」
「技術的な点から話せば、ソニー製品よりもiPodの方が音のレンジが狭いんです。HD20GA7も、欧米の製品に近いレンジの広さと音の厚みを持っています。私はこれまでカーオーディオを15年ほど手がけていましたが、実はほぼ欧米からの仕事だったのです。そうした経験もあって、iPodの音をいいなと感じましたし、HD20GA7が比較的iPodに近い欧米的な音になっているのは、そうした理由があるからかもしれません」
「欧米は石の文化ですから、音の響き、音の余韻を重視します。空間の再現が重視されると言ってもいいでしょう。ソニー製品はそうしたニュアンスが少し足りないかな、と思います」
――HD20GA7が得意なジャンル、苦手なジャンルというものはありますか?
「いろいろな音楽を聴いてみましたが、昔風の曲だと“ちょっとミスマッチかな”と感じるときがありました。最近は録音技術も発達していて、CDも非常にいい音を出すようになっていますが、そうした“最近の音”についてはうまく表現できています。余韻とか、音場感というものをうまく表現できていると思いますよ」
――デジタルアンプの搭載もそうなのですが、電源を含めた各回路をフレームを介して固定するといったアイディアはどこから出てきたのですか?
「オーディオの開発をしていると、まず回路のインピーダンスなどに目がいってしまうのです。そうした部分は骨格部分なので、後からではどうしようもないのですし。後からでは手を付けられない部分に注意していった結果、こうした作りになったという感じですね」
「これまでのオーディオ製品開発から得られたノウハウもたくさん投入されています。チップインダクター(磁束による他パーツへの干渉を排除するパーツ)の選択などには、これまでの開発から得られたノウハウが反映されています」
――HDD(HD20GA7)とフラッシュメモリ(M512A3)、2タイプのデジタルオーディオプレーヤーを市場へ投入したわけですが、次製品の方向性はどのようなものになりますか?
「“ケンウッドらしい音”という音へのこだわりは継続していきますが、クラシックも心地よく聴けるような音作りを目指したいです。これは目指すというよりも、音作りをしていく上での宿命とでも言うものですね。ただ、エッジの部分を尖らせるというよりも、平均点を80点から85点にレベルアップさせて、クラシック“も”気持ちよく聴けるようにするというようなアプローチを取りたいですね。
――ご自身の考える究極のデジタルオーディオプレーヤーとは、どういったものでしょうか?
「私は以前、バンダイのミュージックロボット「LITTLE JAMMER」(関連記事)のチューニングを手がけました。“オーディオ”のエッセンスはHD20GA7のようなポータブル製品だけではなく、このようにおもちゃの世界にも入り込んでいます」
「個人的な話で恐縮ですが、私は自宅でデジタルラジオやCATVのハイビジョン放送を楽しんでいます。音も良いですし、映像もきれいです。最近は特に、デジタルラジオからCATV、ポータブルプレーヤー、おもちゃに至るまで、身近に存在しているメディア(音)のクオリティが上がっていると感じます」
「身の回りに遍在しているメディア(音)のクオリティが上がると何が変わるのか? 生演奏でなくとも、音場や雰囲気、臨場感のような“リアリティ”を感じられるようになるのです。録音された音からリアリティを感じられるようになれば、人間の感性すらも変化してくると思いますよ。リアリティを感じさせる音、そうしたものを作り出していきたいですね」
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