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一緒にドライブしたいロボット(2/2 ページ)

» 2006年10月12日 21時44分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 機能を見ると予想できるが、ROBにはいくつかのセンサーと画像認識技術が搭載されている。クチバシのCCDセンサーや内蔵の加速度センサーがクルマのスピードや揺れを検知し、画像認識技術と組み合わせて状況を判断する仕組みだ。さらに2005年に学会発表した「風景解析技術」も実装している。

photophoto ROBの内部構造。クチバシにCCD、腹部にスピーカーを備える

 風景解析技術は、映像に含まれる色合いやテクスチャ、形を判断して、どのような風景であるのかを分類するというもので、たとえば「垂直エッジが多ければ“電柱”が連なる都市部の風景だと判断する」(同社技術開発本部モーバイルシステム開発センターの藤田隆二郎氏)といった具合だ。シンプルな画像処理のため、CPU負荷が低い点も特徴という。

 この技術を利用して、ROBはクチバシのカメラで勝手に風景を撮影し、メモリーカードに残してくれる。ROBが“興味を持つ”のは、たとえば海が見えたり、真っ直ぐな道が続いている場所など、見晴らしの良い場所――つまり風景解析で単純な風景と判断された場面だ。ただ、デモンストレーションで行っていた「観覧車を撮影」のようなランドマーク検出に関しては、もう少しCPUパワーが必要だという。

photo 観覧車を見つけて記念撮影

 同様に現時点では難しい機能の1つに“お出迎え”がある。クルマの電装系をいじった経験のある人なら分かると思うが、お出迎えするには、エンジンが動いていない状態で通電していなければならない。自動車には常時12ボルトの電源を利用できる配線が用意されているが、これを使ってしまうとバッテリー上がりの原因にもなりかねない。

 「電池を内蔵するなどの方法を検討している。低消費電力で待機させることができれば、自動車の盗難防止など、セキュリティ用途に使える可能性もある」(同社メカトロ事業部技術部の佐藤伸之主事)。ROBの応用範囲は、予想外に広そうだ。

 また、ロボットといえば高価なものになりがちだが、カロッツェリアを抱える同社にはそれなりの勝算がある。たとえば「車載用のCDプレーヤーは、走行時の振動を吸収しながら音を出す。夏場の厳しい(暑い)車内環境にも耐える。そうした車載オーディオ機器の機構とノウハウが利用できる」。また生産においても、「年間、何千万という数をこなすカーオーディオの部材調達を生かせる」という。

 “クルマに載せる”というユニークなパイオニアのロボット。今のところ市場性は未知数としかいえないが、“安全運転のパートナー”“ドライブを盛り上げる”“セキュリティ”といった機能はカーナビにはないもの。仮にカロッツェリアのカタログに(手頃な価格で)載っていたら、カーナビのオプションのつもりで買ってしまいそうだ。

 製品化について、佐藤氏は「CEATEC来場者の反応なども見ながら検討していく」と話していたが、できれば来年の「CEATEC」でもROBに会いたいものだ。もちろん、参考出展ではなく“新製品のデモンストレーション”として。

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