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れこめんどDVD:「GOAL! STEP1 イングランド・プレミアリーグの誓い(HD DVD)」DVDレビュー(2/4 ページ)

» 2006年10月27日 08時43分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

 舞台は10年後、ロサンゼルスに移る。豪華な邸宅のプールでくつろぐサンティアゴ。成功したのかと思いきや、実は庭の手入れにやってきた業者で仕事をサボっていたことが分かる演出が皮肉っぽい。成功は簡単には手に入らない。サンティアゴは父親の下で地道に働いていたのだ。

 ここでは、アメリカで成功している典型的な富裕層の姿が確認できる。庭に咲き乱れる花々、豪華な門扉、家の主と思われる人物が乗ってくる高級車まですべてがゴージャスそのもの。しかも高級車とすれ違うサンティアゴたちの作業車まで同時に見せるので、貧富の差をより実感させてくれる。HDの高画質ならなおさらだ。

 仕事を終えたサンティアゴは地元チームがやっているサッカーの試合に合流する。チームといっても趣味で好きな面子が集まってやる、日本で言えば草野球の類だ。スネ当てがないと試合に入れないという審判の一言に、サンティアゴはその辺にあったダンボールを破り、靴下の中に忍ばせる。しかし、試合はサンティアゴの活躍で勝利する。ここで少年時代から培ってきた彼のサッカーの腕前も観客は知ることができる。ここまでの所要時間は何と5分。次から次へと新たな展開を用意し、観客の関心を引くという演出はダニー・キャノン監督がテレビの世界で身に付けた技術だろう。それにしても快適なテンポだ。

 CH-2では自宅に帰ってきたサンティアゴの家庭の様子が描かれる。階段に布が干してあったり、冷蔵庫に無駄に多い磁石がくっついていたり、生活は決して裕福ではないことが分かる。しかし母親のいないこの家庭で、祖母がきちんと孫たちを養っているのは整頓された棚などからうかがうことができる。細部が見通せないDVDではそうした演出を確認できないのが残念だ。

 夜は中華料理店でバイトするサンティアゴ。ここで彼にグリーンカード(外国人永久居住権及びその証明書)がないことも語られ、社会的に疎外されている背景も見えてくる。サンティアゴは試合に出ている様子を偶然スカウトのグレンに見られる。その姿に魅了されたグレンはイングランドのプロチーム、ニューカッスル・ユナイテッドの代理人にサンティアゴの試合を見るよう強く勧める。

芝のグリーンも鮮やか

 CH-3ではその試合の様子が描かれるが、画質面では芝の表現力に圧倒される。細かな草が1本1本確認でき、まるでその場の匂いまでも漂ってきそうだ。ロングショットではそれぞれの観客の動きも見えてくる。サンティアゴは試合で大活躍するが、代理人は試合会場に現れず、グレンは失望する。

 CH-4はニューカッスル・ユナイテッドのドーンヘルム監督に直接、グレンが連絡を取る場面だ。ここでは時差が感じられるようアメリカとイングランドの画面に明暗がしっかりつけられている。トライアル(入団テストのようなもの)を受けられる機会を得たグレンは、早速そのことをサンティアゴに告げに行く。グレンの真意を確認すべく「目を見て話して」という祖母の思いはこのソフトのように画質が良ければ、より強く印象に残るだろう。

 CH-5では冒頭を思わせる青が強調された夜の風景。サンティアゴは密かに靴の中に貯金をしていて、もう少しでグレンの誘いに応じるだけの渡航費に達するはずだった。しかし息子が離れてしまうと感じた父親は息子の貯金を使って、仕事に使うトラックを購入してしまったのだ。家の外にある新品のトラックは眩いばかりの光を放っているが、それがかって仇になっている。

このミス、大画面だと気になる……

 CH-6では何と仕事中のトラックに撮影隊の姿が映ってしまっているのが確認できてしまった。小さめの画面なら気づかないだろうが、大画面ではモロバレである。映画館ならそのまま先へ行ってしまうが、ソフトなら止めて確認できる。映画に入り込んでいればいるほどショックも大きいので、この辺は製作者たちにはよくよく注意してもらいたい点だ。

 失意のサンティアゴだが、祖母の好意によってイングランドへ旅立てるようになる。ここでは入国したサンティアゴがニューカッスルに移動するまでの空撮ショットがあまりに素晴らしく、大感激してしまった。列車を追って徐々に街が近づいてくる。シネスコサイズをフルに生かした大画面効果が遺憾なく発揮され、鳥肌が立つほど魅力的な映像になっている。

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