ITmedia NEWS >

れこめんどDVD:「GOAL! STEP1 イングランド・プレミアリーグの誓い(HD DVD)」DVDレビュー(3/4 ページ)

» 2006年10月27日 08時43分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

立体感のある自然描写に圧倒

 CH-7はグレンに再会したサンティアゴが翌朝、海に出かけ海岸線をランニングする場面。波の荒々しさと雲の重さが感じられ、往年の名作「炎のランナー」を思い出した。立体感のある自然描写の表現は、通常のDVDとは特に違いを感じる点で、HDの優位性を誰もが感じられるだろう。

 CH-8でドーンヘルム監督と会ったサンティアゴは練習への参加を許される。ここでは空のスタジアムを見ることができるが、そのスケール感は大画面再生すればするほど実感できるだろう。本物のスタジアムはもちろん広大なのだが、映画でそれを表現させるのは決して簡単なことではない。

 CH-9は練習場が舞台。由緒を感じさせるクラブの建物はまるでエドガー・アラン・ポーの小説に出てくるような雰囲気があり、サンティアゴでなくとも重圧感を感じた。結局プロの雰囲気に圧倒された彼はいつもの実力を発揮できず、売り込みは失敗に終わる。

 練習後、サンティアゴはシャワーを浴びるが、水の滴りが涙のようにも見える。ここまでセッティングしてくれたグレンに「甘く考えていた。父の言うとおりになってしまった。地道に生きている父のような人には夢は最大の敵なんだ」と語るサンティアゴ。現実社会でもほとんどの人が夢をあきらめて生きている。「君には夢を捨てないでほしい!」と思わずにはいられなかったシーンである。

 CH-10では意を決したグレンがドーンヘルム監督にトライアルの期間を延ばすよう直訴に行く場面だ。パーティー会場に乗り込んだグレンが勇ましい。普通、この手の場面を作ると予算がかかったなどの理由で、必要以上に説明カットが多いものだが、この映画ではそうした無駄は一切ない。ロングショットでは細かな装飾が確認できるので、何とも贅沢な映画である。サンティアゴは30日のトライアル期間延長を許される。

CH-14でスタジアムの興奮を体感

 CH-14では本物の試合の様子が映される。その場にいた実際の観客を写したスタジアムの興奮はこちらも巻き込まれそうな迫力だ。最近はCGでエキストラを何重にもすることで、満員のスタジアムを映像の上で作っているが、これは間違いなく本物の迫力。ディテールまで見渡せるHD映像でこそ、味わえるダイナミックな描写と言えよう。

 CH-15はプロの試合に触発されたサンティアゴが美しい朝もやの中、ゴールの練習をする場面。ほのかに明らんでくる空がHDで見ると限りなく美しい。彼のサッカーに対するひたむきな姿勢を感じたドーンヘルム監督は、サンティアゴをリザーブ・チームに入れることを決意する。しかし内緒にしていたぜん息のせいで、この試合でも能力を発揮できずサンティアゴは体力不足と判断され、チームを追い出されてしまう。

 CH-17で失意のサンディアゴは恋人の看護婦ロズ・ハーミソンの家を訪ねるのだが、その夕景の美しさも並外れている。優れた実景を画面に収めるには、綿密な調査と撮影当日の天候という運も見方につけなくてはならない。この映画のスタッフはよほど普段の行いが良かったのではないかと思わせる場面だ。

 この後は空港に向かうサンティアゴが偶然、チームの花形スター・ガバンと同じタクシーに乗り合わせたことがきっかけで再びチームに戻される。以降はどんどんメジャーへと出世していくのだが、サンティアゴの前には何度も試練が突きつけられ、観客は主人公に同化したかのように気持ちを揺さぶられる。

 ベッカムやジダンのような有名選手が出てくる場面ではドキドキし、リザーブ・チームの仲間が怪我した時はスポーツ選手の寿命を真剣に考える。監督に試合でのミスを指摘され落ち込むことも。クライマックスはチャンピオン・リーグ出場をかけた大試合だが、ラストは感動のつるべ打ちで一瞬たりとも目が離せないまま映画は終わってしまった。サンティアゴがその後どのような活躍を見せるのか?それは来年公開予定の「GOAL!2」「GOAL!3」で明らかにされる。それまでこのソフトで「GOAL!」を隅々まで味わい尽くしておきたい。

 音声はドルビーデジタルプラスで英語、日本語を収録。音に厚みを感じるのはやはりオリジナルの方だ。日本語吹替版の出来は決して悪くはないのだが、周辺のノイズがすっぽり抜けたような感じになっていて、オリジナルの密度は感じられなくなっている。サラウンド効果は音楽中心だが、試合の場面になると観客の声援でがぜん広がりが増してくる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.