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「iPodキラー」という見出しでグレムリンにされたモグワイ“Rolly”と遊ぶプロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(3/3 ページ)

» 2007年11月28日 08時30分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 ここ数年、iPodの後塵を拝し続けたソニーが新しい音楽プレーヤーの夢を託し、 鳴り物入りでマーケットに投入したRolly。そして大金をかけた割にさほど意味があったとは思えないティーザー広告。結局、大儲けしたのはいつもの広告代理店だけなのだろう。「iPodキラー」という看板を取り除いた素顔のRollyは、筆者にとって極めて興味深いプロダクトだった。

photo 動画でお見せできないのが残念だが軽やかな動きで見る者を魅了する

 都内が急に寒くなった晩秋のビックカメラ有楽町店。エスカレーター脇にRolly本体の姿は見えず、誰も管理していない様に思えるRollyの白い展示台とパンフレットだけが置かれていた。長いレジの列に並んだほとんどの人がiPodを買う中、筆者は、メモリー容量たった1GバイトのRolly本体とAC充電用クレードル、そしてどこかにRollyを持ち出して自慢するための専用キャリングケースの3点を購入した。締めて4万5760円。あと少し出せばiPod Touchの16Gバイトモデルが買える。しかしiPodはあくまでiPodなのだ。目的や機能の異なるモノのメモリー容量を比べてみてもそこには何の意味もない。

 内蔵充電池のエネルギーが切れてしまうと動作しなくなるRolly。されどもACケーブルを引きずりながらのモーションには限度があるRolly。お客さんに何か質問されても、店員が即座に正確に答えられない新ジャンル商品であるRolly。

 説明不要で、ただ置いておくだけで勝手に売れてゆく商品の販売に慣れた昨今の大型量販店のサラリーマン販売員が扱いたい商品ではなさそうだ。現在の価格を守るなら、Rollyはよりフォーカスされたマニアックな販売店やユーザに的を絞って時間をかけてマーケッティングすべき説得型の商品だろう。何よりMacユーザーへの対応と取り込みが先決だ。

 Rollyを購入後、キャリングケースの強みと小振りなRollyのサイズをいかし、筆者のRollyは日本国内を既に千数百キロ旅した。実際に筆者のRollyを目にして手にした人は既に20数人、約8割は20代から30代の女性。何を売っているのか分からない販売店の店頭では誰の注目も集めないRollyだが、実際に目の前で歌い踊る姿は圧倒的に人気がある。

photo 筆者の合コン必携である「ソフトキャリングケース」。本体と同じきれいなパールホワイトだが、少し黒ずんできた……

 多くの女性はしばしその動きにウットリと見とれ、曲の終わりとともに停止すると「カワイイ〜!」を連発する。新橋の飲み屋では、ウェイターがメーカーと製品名をわざわざ聞きに来てメモして帰った。もはやRollyは合コンや飲み会には必携グッズなのだ。できればこのまま誰もRollyの魅力や女子集客力に気付かず、これ以上Rollyユーザーが増えることのないように祈る毎日だ。

製品名 サウンドエンターテインメントプレーヤー “Rolly”「SEP-10B」

販売  http://www.sony.co.jp/rolly

価格  39800円(購入価格)


竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

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