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待望のBDプレーヤー、デノン「DVD-3800BD」で「あの頃ペニー・レインと」を観る山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.11(2/2 ページ)

» 2008年04月02日 18時57分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 デノンからは、背面の出力端子にHDMIが1つだけ用意された「DVD-2500BT」というBDトランスポートがすでに発売されているが、本機はこの2500BTをベースに、HDMIのほか、アナログ音声出力(2ch優先出力とマルチch出力)、S/PDIF同軸音声出力、それにコンポジット、S端子、コンポーネントの各アナログ映像出力を備えた、とりあえずどんなテレビ、プロジェクター、AVアンプ(マルチch入力付き)プリアンプにでもつなげる本格BDプレーヤーである。再生できるのは、BDビデオのほか、DVD、CDなど。SACDには対応していない。

photo デノンの「DVD-3800BD」。BDトランスポート「DVD-2500BT」も外観はほぼ同じだ。価格はDVD-380BDが33万6000円、DVD-2500BTが23万1000円

 MPEGデコード等の信号処理を司る本機のメインLSIは、松下から供給された「ユニフィエ」だが、前回の連載で採り上げたPHL(パナソニック・ハリウッドラボ)製のクロマアップサンプリングエラー対策が施されたMPEGデコーダーは残念ながら搭載されていない。

 しかし、高級BDプレーヤーとして開発された製品だけに、仕上げは一頭地を抜く素晴らしさ。まず、同社高級オーディオ製品と共通のデザイン・テイストの威風堂々としたルックス、佇まいが好ましい。ヘアラインが施されたシルバーメタルなフロントパネルの微妙なアールも美しい。いかにも見た目が家電チックな他社のBDレコーダーとは大違いなのである。

 ノイズ混入を防ぐため、電源、ビデオ、オーディオの各回路を3ブロック構成で美しく配置した内部コンストラクション、2層構造のトップカバー、3層構造のボトムシャーシの採用等、防振構造にも抜かりはない。異種素材を組み合わせて振動モードをコントロールしたローダーを新開発、スタビライザープレートを組み合わせて安定したディスク回転を実現して読み取り精度を高めていることにも注目したい。とにかく、デノン流儀のクォリティにこだわった造り込みが随所で発見でき、安心してハイエンド大画面システムに組み込める製品に仕上がっているのである。

 とくに音質のよさは、現在発売されているBDプレーヤー/レコーダーの中で間違いなくナンバーワンだろう。アナログ音声出力には、16ビット/20ビットの元信号を24ビットにデータ拡張する同社独自の「AL24 Processing Plus」が入るが、2ch専用出力には、さらに「Advanced AL24 Processing」処理が加えられる。これは、同社オリジナルのアルゴリズムで、時間軸上でのアップサンプリング、データ補間を行なう高音質技術。確かにこの2ch優先出力の音は、同価格帯のCDプレーヤーとじゅうぶん伍して戦える音質に仕上げられている(ピュアダイレクト・モードがお勧め)。

photo 映像出力は、HDMI×1、コンポーネント×2、Sビデオ×1、コンポジット×1。音声出力は光デジタルと同軸デジタルにくわえ、アナログ7.1chとアナログ2chを備える

 ロスレス・コーデックを含め、すべてのサラウンドサウンドの音声信号を取り出せるアナログのマルチch出力の音もよく磨かれている。この出力端子を使えば、ドルビーTrue HDやDTS HDMA(マスターオーディオ)のデコード機能を持たない、旧タイプのAVアンプやマルチch入力付きプリアンプのオーナーの方も、すぐにHDオーディオが楽しめるのである。

 実際に、本機のアナログマルチch出力を自室で使用中の「AVC-A1XV」につないで、BD「あの頃ペニー・レインと」のドルビーTrue HD5.1chサウンドを体験してみた。

 2004年に発売されたAVC-A1XVは、先代のデノン製一体型AVアンプのトップエンド・モデル。HDMI入力を3系統備えるが、発売時期から考えて当然ながらドルビーTrue HD やDTS HD MA(マスターオーディオ)のデコーダーを搭載していない。

 バンドのスタジアムでのライブの雄大な臨場感の表現や、コクと厚みのあるナマナマしいダイアローグなど、やはり従来のドルビーデジタルのロッシー音声とは大きな違い。このドルビーTrue HD音声で聴いて初めて、ユースカルチャーが元気だった1973年当時のあのざわついた雰囲気が蘇ってきた気がした。

 A1XV、発売当時70万円弱と高かったが、本機のアナログ6ch出力をつないだ音は、現在の一体型AVアンプの最上位機種「AVC-A1HD」とHDMI 接続した音よりもよいかもしれないと思わせた。そう、このBDプレーヤーを手に入れてアナログ6ch出力を活用すれば、HDオーディオに対応していない愛着のあるAVアンプやマルチch付きプリアンプを生き返らせることができるのである。

 「AVって次から次へ新フォーマットが登場して全然ついていけないよ。だいたいなんでそのたびに機械を総取っ替えしなきゃなんないの?」とお怒りのファンも多いだけに、こういう製品の登場は大歓迎である。

 そんなこんなで、ぼくも自室への本機の導入を決めた。あとはこのBDプレーヤーの魅力がますます際立つような音のよいHDオーディオ作品が増えることを祈りたい。とくに音楽ソフトに魅力ある作品が少ないように思う。

 アナログレコードとHDオーディオのBD。当面、ぼくはこの音のよい二つのソフトに注目して楽しく生きていきたいと思う。

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