ITmedia NEWS >

フルデジタルスピーカーに見た“日本のモノづくり”――「CEATEC JAPAN 2012」総括(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/2 ページ)

» 2012年10月18日 18時34分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

――前回は、4Kテレビやモスアイパネルについて伺いました。テレビ関連でほかに気になった展示はありますか?

 今回、テレビ関連の話題では4Kテレビとモスアイパネルが中心だったと思いますが、もう1つ、ユーザーベネフィットの面で画期的といえるのが、東芝の「TimeOn」です。TimeOnは、見たい番組を教えてくれるインテリジェントな機能。東芝は以前から「タイムシフトマシン」(全録機能)で蓄積した大量の番組の中から、ユーザーの嗜好に合った番組をレコメンドすることが日本的スマートテレビではないかと言っていましたが、それが今回入った形になります。

東芝ブースでTimeOnのデモを見る麻倉氏

 エムデータが提供するテレビ番組のメタデータを使い、番組どころかシーンごとにレコメンドしてくれるのが凄いところ。これまでの全録は、録画はしてくれても、見る番組は自分で選ぶ必要がありました。しかし、メタデータ使えば効果的に頭出ししてくれるだけでなく、関連する情報やコーナーも出てきます。履歴を参照して番組を推薦してくれたりと、従来のテレビの使い方を一歩進めるサービスといえるでしょう。

 ここまでは以前からPTPの「Spider」シリーズが実現していましたが、今後のSNS、タグリストシェア、ランキングなどはオリジナル。ユーザーオリエンテッドな機能であり、東芝の先行開発が生きてきた部分でもあります。

 4K関連では、ほかにもパナソニックがひっそりと展示していた20V型の4Kパネルや、シャープのIGZO(32V型)も興味深いです。大画面・臨場感の世界ではなく、高精細モニターの世界ですが、特定用途まで含めるとさまざまなニーズがあります。現在、4K対応のモニターテレビはEIZOの一部機種くらいしか存在しませんが、例えばシャープの32V型はプロダクション用モニターとしても有望なサイズではないでしょうか。また、アストロデザインが4K製品のラインアップを展示していました。特定用途向けですが、モニターからカメラ、スイッチャーなどもそろい、ソリューションとして提供されています。

アストロデザインブースの4Kソリューション(左)。プリズムのレーザー蛍光体ディスプレイ”は、日本電気硝子ブースのステージでプレゼンに使われていた(右)

 それから、気づかない人も多かったと思いますが、プリズムという米国のベンチャー企業が作った“レーザー蛍光体ディスプレイ”もありました。これは、1本のレーザー光線で発光体を高速走査して発光するタイプのディスプレイで、いわばブラウン管の電子銃をレーザーに変えたようなもの。消費電力が少なく、直接発光ではないので画面にぎらつきもありません。プロジェクターのスクリーンを見るようなパッシブ的なテクスチャー画になります。

 もう1つの特長は、25インチのディスプレイをタイル状に並べてサイズをいくらでも大きくできること。このため、日本電気硝子ブースのステージでスクリーンとして使用されていたのです。民生用ではありませんが、本格的なレーザーディスプレイが登場して商用化に入ったことは画期的といえるでしょう。

 三菱電機ブースでは、例年映像コーデックの展示がありますが、今年はHVC(High performance Video Coding)でした。これまでデジタル放送の映像コーデックはMPEGでしたが、次世代のスーパハイビジョンに採用されるのがHVCです。従来のMPEGとディスクリートコサイン変換の部分は同じですが、動きがあるところに適宜情報量を増やすことで、MPEGの2倍以上という圧縮効率を実現しています。いずれ放送技術の根幹となる技術です。

エイム電子のレーザーケーブル。100メートルで29万4000円

 エイム電子は、世界初のレーザー発光によるHDMIケーブル「レーザーケーブル」を開発しました。エイム電子は銅線のケーブルも評価が高いのですが、この4K対応ケーブルはすごい。実はCEATEC JAPANの前に性能をチェックする機会があったのですが、ソニーのBlu-ray Discレコーダーから4Kプロジェクターまで100メートル伝送しても全く問題ありませんでした。また、銅線のケーブルとレーザー発光のケーブルを比べてみたところ、映像にも大きな違いがあります。黒がより黒く、白はより白く表示できますし、精細感が出てきました。銅線は外来電磁波の影響を受けますが、光伝送ならその心配はいりません。その効果が良く分かる実験でした。4K時代の映像伝送は、単に映れば良いのではなく、より良く映ることが重要になるでしょう。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.