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アキュフェーズの40年を詰め込んだ純A級アンプ「E-600」潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2014年02月14日 18時22分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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1974年に発売されたプリメインアンプ「E-202」とFMチューナー「T-101」のカタログ写真。E-202は同社最初のプリメインアンプだ(出典:アキュフェーズ)

 オーディオの黄金時代、この国にも数え切れないほどのブランドが存在した。大手家電メーカーはもとより、オーディオ専業と呼ばれる企業が覇を競い、たくさんの素晴らしい製品を生み出した。やがて時代は成熟し、オーディオも重厚長大なモデルからラジカセやウォークマンを初めとする手軽なポータブル機器へと姿を変える。アキュフェーズはこうしたオーディオの形が多様化し始めた41年前、1972年6月1日に情熱あふれる若者と高き志を持ったリーダーによって誕生した。

 この頃、家電メーカーはもちろんオーディオ御三家と呼ばれる、山水、トリオ(後のケンウッド)、パイオニアによって激しいシェア争いが繰り広げられていた。しかしながら量を追い続けると質を保つことが難しくなるため、トリオからスピンオフした13名の戦士は、自分達が信じる新たなる道を切り拓くため、アキュフェーズを立ち上げたのである。

 だから彼らはミニコンポは作らない。加えてエレクトロニクスが介在する製品だけにフォーカスしているので、スピーカーも作らない。順調に業績が推移すると裾野を広げたくなるが、そうした拡大路線を取らなかったのは、企業設立の理念を頑なに守り続けているからだ。

創立40周年を記念したプリンメインアンプの最上位モデル

 「E-600」は、そのアキュフェーズが創立40周年を記念して、昨年11月に送り出したプリメインアンプの最上位モデルである。プリメイン1号機の「E-202」は1974年に発売されているが、今見ても古さを感じさせない。それは彼らのこだわりが、アンプの性能だけでなく、デザインにも向けられているからだ。内部の基板レイアウトやワイアリングも丁寧にして簡潔。見えないところにも手を抜かないエンジニアの心意気が随所にうかがえる。

プリメインアンプ「E-600」。価格は68万円

 E-600の最大の特長は、出力段を純A級で動作させていることだ。アナログ方式のパワーアンプは大きく分けてA級動作とAB級動作の2つに分けられる。AB級は効率よく大出力を取り出せるが、歪(ひずみ)率に関してはA級の方が優れている。しかしながらそのためにA級動作のアンプは常にバイアス電流を流さなくてはならず、ソリッドステートであってもかなり発熱する。それだけにA級動作の製品は物量が要求されるし高価にもなるが、それでも彼らがこの方式にチャレンジし続けるのは可能性を追求しているからである。

 出力デバイスにはMOS-FETという底力のある素子を使いながら、プリアンプ部にアキュフェーズ独自の開発となるノイズと歪の発生が極めて少ないAAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)方式のボリューム・コントロールを採用し、実用領域のSN感を高めている。そしてこの方式は小音量時の再生に格別の静けさをもたらしていることにも触れておきたい。

背面端子と内部。大きなトロイダル・トランスが目をひく

 さらにこのボリューム・コントロールにはセンサー機構が加えられ、高精度の微調整が行えるだけでなく、ノブにはアルミの削り出し素材を用いて回した時の手触り感を大切にしていることも評価したい。最新モデルはリモコンでのコントロールを主体に考えられているので、本体での調整機構は簡素化されることが多いが、指先の感触にまで言及しているところにも彼らの心意気が感じられる。

AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)方式ボリューム・コントロールの内蔵構造イメージ。重量級の機構を使っているためノブ回転も好フィーリングとなる

 またスピーカーに対する駆動能力を高めるため、徹底した低インピーダンス化を実現していることもこのモデルの大きなポイントだ。そのために強固な電源回路が投入されている。出力段の歪率を低減するためにNFBという技術が用いられているが、NFBに頼らず裸特性の向上で動的な低インピーダンス化を実現していることも音質の純化に貢献している。

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