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ハイレゾ再生の新しい潮流(後編)――ポータブルでハイレゾ鑑賞のススメ麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/2 ページ)

» 2014年04月01日 15時08分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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“ハイレゾ”が新世代オーディオのキーワードとなり、音楽ジャンルと対応機器の幅が広がってきた。据え置きモデルを中心に最新機器を紹介した前回に続き、今回はハイレゾ再生に使えるポータブル機器を取り上げよう。

注目の製品を手にする麻倉氏

CHORD(コード)のDAC「Hugo」(ヒューゴ)

麻倉氏: 先日、私が講師をしている「ビックロ」のイベントで最新のUSB-DAC4機種を比較試聴しました。そのとき、一般参加者の皆さんが良いと感じた製品に手を上げてもらったのですが、15人中13人と圧倒的に支持されたのが英CHORD(コード)の「Hugo」(ヒューゴ)です。音楽を“再生”するというより、まるで“蘇生”しているかのよう、目の前で楽器が演奏されているかのようなリアリティーのある素晴らしい音でした。

CHORDのDAC兼ヘッドフォンアンプ「Hugo」はタイムロードが販売中

 Hugoはポータブル用のUSB-DACですが、ユニークな点が2つあります。まず、一般的なDACチップを搭載せず、FPGA――つまりプログラマブルなICで回路を構成していること。DACチップを使えば、どこのメーカーでも一定程度のの音は出せますが、FPGAの場合は“プログラム次第”でどこまでも音質を上げることができます。逆もありますが。これまで定評のファイル再生機のLINNのDS、プレイバックデザインのUSB・DACはFPGAで構成されています。Hugoには天才的なエンジニアが開発した非常にハイスピードなDACソフトウェアが入っているのです。

 音源のデジタル化とハイレゾ化でメディアとしての音質は底上げされましたが、実際にわれわれが聴く音は必ずアナログです。デジタルの音をいかにアナログに変換するかが、音を決める重要な要素であることは間違いありません。きわめてハイスピードが実現できるアルゴリズムの結果として、素晴らしい音が出たのです。

 もう1つの特長は、常にバッテリーから電源を供給していること。ACアダプターを接続している場合でもバッテリーからのDC駆動を行う仕組みです。これも音質に貢献しているのではないでしょうか。本DACは、PCと接続するUSBケーブルが、情けないmicroUSBタイプで、とても音質的には許せないような感じなのですが、それでも音は圧倒的です。ここにオーディオ用のケーブルを使ったら、さぞ……と思いました。

iriver「AK240」

麻倉氏: iriverの「AK240」は、同社のハイレゾ対応ポータブルプレーヤーの第3弾。シーラス・ロジックのハイエンドDAC「CS4398」を2つ搭載したデュアルモノラル構成のハイエンドモデルで、ポータブルとしては初となるDSD 5.6MHzのネイティブ再生を可能にしたや独特のスタイルで注目を集めましたね。

iriverの「AK240」。直販価格は29万3143円(8%消費税込み、4月1日時点)となっている

 音も立派ですが、値段も立派。価格は、なんと30万円近いです。ポータブル環境での高品質機器は2011年のiBasso「RDP-R10」以来、一部ユーザーには大変支持されてきましたが、ここまで高価格なものが品不足になるほど売れたことは驚きです。

 iriverに話を聞いたところ、ずいぶん前から圧縮音源だけのポータブルプレーヤーに不満を持っていたそうで、ハイレゾ音源の登場で「やっとできるようになった」と喜んでいるそうです。冒頭で触れたようにポップスやアニソンといった音楽ジャンルの広がりでユーザー層も広がっていますから、ポータブルユーザーとの相性も良かったのだと思います。

 また開発当初は光出力を装備する予定でしたが、途中でバランス出力に変えたそうです。これは、日本のポータブルファンの間でもバランス対応ヘッドフォンが普及してきたため。徹底的に音にこだわったモデルといえます。

 スタイルもユニーク。本体に上から光を当て、生じた影そのものを造形をしたというものです。デザインには賛否両論あるかもしれませんが、音と一緒に形も高品位なものに変えていく試みには注目したいと思います。

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