ドルビーが推奨する家庭用のスピーカー配置は、「7.1.4」「7.1.2」「5.1.4」「5.1.2」の4つ。最後の数字は天井スピーカーの数で、4個あるいは2個を天井に設置することになる。天井スピーカーの位置は6通りあって、いずれも左右の天井スピーカーはフロントL/Rの軸上に設置する形。視聴者のほぼ真上(若干前寄り)の左右は「ミドル」、少し前方の左右を「フォワード」、後方左右を「バックワード」と表示する。
例えば「7.1.2」のように天井スピーカーが2本の場合はミドル、「7.1.4」のような4本の場合はフォワードとバックワードを使用するのが基本となる。なお、天井スピーカーの設置にあたっては、高さはフロントスピーカーの2〜3倍とし、取り付け時には視聴者に向けるのではなく、まっすぐ床に向けるという。
9chのパワーアンプを搭載する「SC-LX58」では、上記4つの配置パターンのうち、もっともハードルの高い「7.1.4」を除く3パターンをサポートした。また同機では2つのサブウーファーをサポートしているため、配置としては「7.2.2」「5.2.4」「5.2.2」となる。ちなみに3つのうちオススメの配置を聞くと、「われわれも各配置の優劣を検証している段階。細かい優位性については今後、情報を出していきたいです」(山田氏)。
なお、天井スピーカーについては、代替となる「ドルビー・イネーブルスピーカー」がDolbyから提案されている。これは、フロントスピーカーなどに斜め上向きのスピーカーを設け、天井に音を反射させて同様の効果を得るというもの。パイオニアも海外の“ELITE”ブランドで同様の製品を出す計画を持っているが、国内販売の予定は当面なし。理由をたずねると、「イネーブルスピーカーの場合、天井に“反射面”を設ける必要がある場合も考えられます。設置環境を含め、良く検討する必要があります」(平塚氏)。現状では費用対効果の判断が難しいのかもしれない。
実際にDolby Atmosを体験した。今回はドルビーのデモ用コンテンツ2種で、ジャングルを背景に鳥や虫が頭の上を飛び回る音が面白い。上方だけでなく、前後左右どこに音源が来てもしっかりと定位してクリアな音を聞かせてくれるのは新鮮だ。これまでも上方向に音場を広げるアプローチはいくつもあったが、やはり物理的に天井スピーカーが存在する意味は大きい。おそらく、従来のホームシアターを知っている人ほど、その違いに驚くのではないだろうか。
「天井スピーカーがない従来の方式とは、天と地ほどの差があります。たいていの人は、天井にスピーカーを設置するというだけで引いてしまいますが、実際の音を体験すると『どうやって設置すればいいのか?』に変わりますね」(山田氏)。
もう1つの収穫は、SC-LX58の自動音場補正技術が、Dolby Atmosでも有効に作用することが分かったこと。新しいサラウンドフォーマットが登場したとき、メーカーは自社の持つ自動音場補正技術を最適化して最大限に効果を上げられるようにするが、当初はどうしてもメーカー間で対応の早いところ、遅いところが出てくる。今回は、単純なDolby Atmosデコードを模したデモ(ベーシックなフェイズコントロールだけはかけている)と、同社の「フルバンドフェイズコントロール」をかけたデモを比較試聴したが、後者を聴くと頭の上を飛び回る羽音の軌跡がびしっと定まり、ストレートデコードだけではDolby Atmosの実力が出し切れていなかったと分かる。
「扱うスピーカーが増えるDolby Atmosでは、各スピーカーの調整、位相管理がさらにシビアになります。SC-LXシリーズの『MCACC PRO』には、ソフトの位相管理を行う『フェイズコントロール プラス』に加え、各スピーカーの調整と位相まで管理する『フルバンドフェイズコントロール』も含まれています。現段階で、われわれの製品がもっと理想的にDolby Atmosを“鳴らせる”と言い切っていいと思います」(山田氏)。
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