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国内だから実現できたスゴイ製造技術――バルミューダ「GreenFan Japan」の工場に潜入した滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2015年06月25日 19時14分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 バルミューダの扇風機「GreenFan」シリーズは、かつて製造を全て中国で行っていた。しかし、昨年発表された最新モデル「GreenFan Japan」からは、同社寺尾玄社長の決断により、完全国内生産へと移行する(→関連記事)。

「GreenFan Japan」とその羽根。自然な風を送り出す

 「GreenFan Japan」の発表会で、寺尾社長は「日本から世界に発信するという確固たる想いを込め、製品名に“Japan”という国名を入れました。同時に、製品の製造から組み立てをすべて日本国内で行うことに決めました」と話していた。また「GreenFan Japan」について、「今、一番良い扇風機はコレです、と断言できる」と胸を張った。「この形が扇風機というもののファイナルだと言っても過言ではありません。このモデルを今後5年、10年と販売し、『日本にはいい扇風機があるらしい』と世界で言ってもらえるようにしていきたい」(寺尾氏)。

寺尾社長(写真は新製品発表会のときのもの)

 バルミューダにとって「GreenFan Japan」は扇風機の完成型。そして、それを実現するのに欠かせなかったのが、バルミューダの要望をしっかりと汲み上げ、製品をスピーディーに世の中へ送り出す、製造工場のスゴい技術が存在するからだ。もちろん、中国の人件費が上がったとはいえ、東南アジアなど工場を移すのに適した場所はほかにもある。あえて国内生産に戻した理由について、同社広報の阿部洋氏は以下のように話している。

 「『GreenFan』の羽根は、初代モデルを2010年に発売して以来、さらに5年にわたって磨き上げてきたもの。『GreenFan Japan』開発時に何十というパターンの羽根の形を試しても“変えることができなかった”ほど研ぎすまされています。この技術をさらに上のレベルに引き上げるには、作り手に委ねるしかない、という結論にたどり着きました」。

 国内生産であれば、かけたコスト以上に“質”という製品価値を生み出すことができる。「『人件費以外のトータルコストを1つずつ見直して圧縮していけば、たとえ日本国内で生産しても海外で生産した場合と同じぐらいにコストが引き下げられると寺尾自身が判断しました」(阿部氏)。

 「GreenFan Japan」の量産にあたり、バルミューダは山形県米沢市にある2社と提携した。質の高い金型を製造管理できるコアタックと、組み立てラインを随時形成できるサクサテクノだ。

コアタックの社屋

コアタックの遠藤晶社長

 コアタックの遠藤晶社長は「製造を始めた昨年は、中国で作られた金型を修正しながら使っていたこともあり、約3割のパーツは使いものになりませんでした。今は日本で作った金型と日本でメンテナンスした中国製の金型を使っているため、歩留まり率を98%と劇的に高めることができています。最初はバルミューダの求める製造レベルの高さには驚きましたが、そのぶん、こちらの精度もこの1年で随分高まりました」と語っていた。

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