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ノイキャン体験を革新する“ソニーの勝負ヘッドフォン” ――「MDR-1000X」開発者インタビューワイヤレスで行こう!(3/4 ページ)

» 2016年10月07日 09時00分 公開
[山本敦ITmedia]

ノイズをキャンセルしながら外音が取り込める「アンビエントサウンドモード」

 本機の商品構想が起ち上がってから、最終製品として完成するまでの間にはヘッドフォン・リスニングの時流に乗せるための新機能も追加されてきた。その1つが、ノイキャン機能をオンにして、音楽を再生しながらでも外の環境音が取り込める「アンビエントサウンドモード」だ。その誕生の経緯を渡辺氏が振り返る。

 「ノイズキャンセリングヘッドフォンのユーザーの使用傾向を調査していると、アウトドアで使っているときに、外の音が聞こえなくなって危ない思いをしたことがあるという声が集まってきました。ソニーのラインアップには外の音を取り込むためのモニターモードを搭載する製品もあったのですが、使い勝手の面など改善する余地があると考えて、今回はコンセプトをゼロにリセットして、新しい機能の開発に着手しました。ユーザーの方々は、ヘッドフォンを身に着けながら、どんなときに外の音を聞く必要を感じているのか。さまざまな方を対象にアンケートを集めた結果、辿り着いたのが『ノーマル』と『ボイス』という2つのモードです」(渡辺氏)

 左のハウジング側面にある「アンビエントサウンド」のボタンを押すとモードが起動。選択状態は音声ガイドが知らせてくれる。「ノーマル」モードでは外部環境の音を多く取り込み、ノイズキャンセリング効果はあえて控えめにしてわずかに低域のノイズを消音する。「ボイス」はその名の通り、人の声だけをピックアップできるモードなので、駅や空港、ショップでのアナウンスにも気を配りながら音楽が楽しめる。それぞれにアウトドアでも、より安全にヘッドフォンリスニングを楽しむためにつくられた機能だ。

 実機で試してみると、従来は何となくノイズキャンセリングヘッドフォンを使うことがためらわれた街歩きでの音楽リスニング時にも、周囲の音に耳が向くようになる。ヘッドフォンを活用できるシーンが間違いなく広がるだろう。

 外部の音を一時的にモニタリングするための「クイックアテンション」も便利な新機能だ。MDR-1000Xは右側のイヤーカップに静電容量式のタッチセンサーリモコンを搭載している。この部分を手のひらで覆い隠すようなジェスチャーによりクイックアテンションが起動。操作の間は音楽がミュートされて、外の音が耳に入ってくる。自然なジェスチャー操作で起動するので、とっさに外の音を聴きたいときにも素速く反応できる。コンビニでお会計をする際など、わざわざヘッドフォンを脱ぎたくないけど、一瞬会話ができるようにしたい時にも便利だ。

右側のイヤーカップがタッチセンサーリモコンになっている。表側を覆い隠すようなジェスチャー操作により、クイックアテンション機能が起ち上がって外の音が聞こえるようになる
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 ヘッドフォンを身に着けたままだと会話の相手に「この人、ちゃんと聞こえてるの?」と思われてしまいそうだが、耳に手をあてがう若干オーバーアクションなジェスチャーを伴うので、相手に少なからぬアピールはできそうだ。グローバルに商品を展開するソニーでは、この“片方の耳に手を添える”というジェスチャーが持つ意味を世界のマナーに照らし合わせて、礼儀作法のタブーに触れていないか確認を念入りにチェックしたというエピソードを渡辺氏が紹介してくれた。

 なお本機のタッチセンサーリモコンは反応が鋭く正確なだけでなく、再生/一時停止操作はシングルではなくダブルタップに割り当てるなど、細かい所に配慮が行き届いている。センサーの感度が高いぶん、うっかりタップしてしまったときにも誤動作の発生を防げる。渡辺氏によれば、これもソニー社内でジェスチャー操作も含むユーザーインタフェースの開発を担当してきたチームが注いできた情熱の賜物なのだという。

ユーザーに合わせてノイキャン効果を最適化する「パーソナルNCオプティマイザー」

 そしてもう1つ、本機から新たに搭載されたノイズキャンセリングまわりの新機能に「パーソナルNCオプティマイザー」がある。ヘッドフォンの身に付け方によって発生する、ノイズキャンセリング効果のバラツキを抑えて、一人ひとりのユーザーに最適化するための機能だ。

 筆者もその一人だが、おそらく多くのメガネ派の方々は、メガネを変えたり、コンタクトにした時などによってヘッドフォンの装着具合が変わってしまうという経験したことがあるのではないだろうか。女性の場合は髪型が装着感に影響を及ぼすことも多々あるだろうし、極端なことをいえば、人によって異なる耳の大きさが原因となって、メーカーの設計者が理想としたパフォーマンスが発揮されていない場合も考えられる。

 パーソナルNCオプティマイザーは、ヘッドフォンを装着した状態で本体のNCボタンを長押しして起動する。約10〜15秒の間、イヤーカップの中に特殊な信号を発生させてアコースティックな状態を測定・解析し、ユーザーにとってベストなリスニング環境を整えてくれるのだ。測定を行った前後で比べてみると、音像の定位感がいっそう安定して、音のつながりも引き締まった。

 測定はパパッと短時間でできるので、理想をいえば本機を使うたびに毎度測定してベストコンディションを保ちたい。でもそれが面倒なら、一度測定した状態は再びNCボタンを長押しして測定を行うまで保持されるので、メガネとコンタクトを着替えたり、髪型大きくイメチェンした時に忘れず測定しておけば十分だ。

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