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» 2016年11月29日 06時00分 UPDATE

「楽しくて華やかだけじゃない」コスプレの過酷な現場をレイヤーが語る

[ちぷたそ,ITmedia]
コスプレ企画 本企画は、とある男装レイヤーさんにフォーカスした記事です

 コスプレイヤーの中でも多数を占める「男装レイヤー」さんにフォーカスを当てる本企画。

 筆者は、「一般のコスプレイヤーへのイメージと、実際のコスプレイヤーの間にはギャップがあるのでは」という疑問を抱いていました。そこで、一般の方々に聞き込みして回った「コスプレイヤー」のイメージを、男装メインで活動しているコスプレイヤーのN子さんにぶつけて疑問を検証してみたいと思います。

N子さん N子さん

 N子さんは男装メインで、今のメインジャンルは「刀剣乱舞」。だけど女性キャラもたまにはやるコスプレイヤー。最初から男装メインだったわけではなく、当初は「ハードル高そう」と避けていた。しかし、実際にやってみたら「自分にもできた」という驚きと、存外に楽しいことにはまっていった。本格的にコスプレにのめり込んでからは2年ほど。本人いわく、「ド底辺レイヤー」。

疑問はこちらです 疑問はこちらです

 そんなN子さんにぶつけられる疑問はこちら。前回の記事では、「自分に自信がありそう」「対人面に難がありそう」「自分に自信があって、胸があったらやりたかった」などの疑問が挙がりました。

 今回は、会話の中で出てきた「一緒に作品を作り上げている」という、カメラマンとコスプレイヤーの関係からスタートします。

レイヤーとカメラマンの意外な関係

ちぷたそ  レイヤーさんとカメラマンさんの関係性って、レイヤー活動をしていない人間にとっては謎なんですよね……。

N子さん  昔は自分1人で撮影していたのですが、自分で三脚を立てて撮るっていうのは技術的にすごく難しいんですよ。なので、今はコスプレイヤーズアーカイブ(コスプレイヤー向けSNS)やTwitterなどでカメラマンさんを募集させてもらっています。

 そもそもカメラマンさんをつけるなんて「殿上人かよ」と私も思っていたのですが、カメラマンさんをつけるっていうのは最近のレイヤー界隈のトレンドでもあります。カメラマンさんがついているっていうのは、今はレイヤーの間では割と普通になっているんですが、この状況って昔を知る人間からするとかなりぜいたくな環境なんですよね。

ちぷたそ  そうそう、イベント会場とかでもカメラマンさんとレイヤーさんのコンビはよく見かけるんですよね。ただ、私は勝手に「取り巻き」みたいな感じを想像していたので、「失礼しました」という気持ち……。

N子さん  取り巻きがついてるような子もいると思うけど、私に関しては何故カメラマンさんとご縁があるかというと、友達の友達であって……人の縁なんですよね。レイヤーやカメラマンは自分のコス用名刺を持っていて、それを交換することで縁を作っていくんです。

ちぷたそ  レイヤー名刺……コス写真、コスネーム、Twitter、メールアドレスなどが載っている名刺ですね。

コス名刺 コス名刺。レイヤーさんはコス名刺などを使って縁を作っていく

N子さん  かわいい女子キャラをやっている子は男性カメラマンの知り合いが多くて、特にモデル出身の子はプロカメラマンとのつながりがあるから、そのつてで撮ってもらうこともあるみたいです。

 有名レイヤーさんとは次元も違う。私は、名も知られていない底辺レイヤーだから……本当に。よく映っているのは本当にカメラマンさんのおかげだと思いながらコスプレをしています。

ちぷたそ  コスプレ写真はレイヤーさんとカメラマンさんが作り上げる「作品」なんですね。

N子さん  私はよく口癖のように「カメラマンさんのおかげです」と口にするけど、本当に7〜8割はカメラマンさんの技量によるものだと思っています。だから、カメラマンさん頼みでなく、三脚とかで撮った写真ですごい拡散されている人を見ると、「この人は本物だ!」って震える。

ちぷたそ  へー!

N子さん  でも、最近、切なかったことがあって。レイヤー仲間と、カメラマンさんとで作り上げたコスプレ写真がSNS上で拡散されたんですね。でも、そのときに単純に「カメラマンさんのファンです」っていうリプライが大量に来ました。そのリプライの多くは「このカメラマンさんだから素晴らしい」という内容のものでした。

 だから、「被写体は見られていないのかもしれない」と思ってしまって悲しくなりました。そのときのメンバーは、衣装やメイクをめちゃくちゃ頑張っていて、ポーズを取るのだって、ずっと同じ体勢を取り続けるわけなので結構大変なんですよ。

 そのうちの1人は、膝立ちで何時間もポーズをしていました。終わったとき、膝ががくがくになったその子はポシャッって水の中に倒れてしまったんですよね。撮影はそれぐらい過酷なので、「単純にカメラマンさんがいいからこの写真は素晴らしい」と言われてしまうと、レイヤーの努力も少しでもいいから察してほしいなと思ってしまうのです。

ちぷたそ  過酷だ……。コスプレイヤーって想像していたよりも体育会系寄りなんですね……。

コスプレはまるで「部活動」!

N子さん  ポーズを維持している時間が長くて、ある1枚を撮るためにマネキンになるんですよね。カメラマンさんからは「楽にしていいよ」って言われるのですが、私みたいな(自称)底辺レイヤーは力の抜き方が分からない。ちょっと動いたらさっきの構図を再現できなくなるので。そうすると、カメラマンさんから「さっきの位置からずれてる」って指摘されて、指示棒でビシビシ指摘されることもあります。だから私は「ポーズを解除したら死ぬ」と思って動かないんです。

 それで、コスプレ歴が浅いのがばれます。ポーズの再現というか、復元できるのが上級者レイヤーらしくて。そのとき、モデル出身と舞台俳優出身のレイヤーがいたのですが、2人とも「楽にして」と言われたときにスッと力を抜くことができるんですよね。でも、私はずっとポーズをしたまま待っているから、カメラマンさんに「あれ、1人だけ歴浅い?」と指摘されました。

ちぷたそ  「コスプレ上級者かどうかはポーズの復元で見分けられる」。そういう厳しい撮影もあるって知りませんでした。みんな和気あいあいとやっているとばかり……。

N子さん  「コスプレしているんじゃない、作品を撮っているんだ」というグループもあれば、もちろんわちゃわちゃした楽しい感じの撮影もあります。そういうわちゃわちゃした撮影がないと、心が先に死んでいく……。最初はコスプレして、好きなキャラをやって、それだけで「楽しい!」という感じでしたが、いつのまにか芸術性を求めるようになっていましたね。

ちぷたそ  N子さんはストイックなので、同様にストイックな人が集まっていやすいのかなと勝手に思いました。

N子さん  コスプレは、本当にカメラマンさんのおかげであり、一緒に合わせてくれるレイヤーさんのおかげであり、たまにアシスタントで来てくれる方もいて、本当にいろんな人の努力の結果として1枚の写真ができています。本当に面白い世界ですが、苦労は絶えません。でも、撮影が楽しかったり、成果物としての写真が良かったりすると、その苦労を上回っちゃうんですよね。だから続けることができる。やってる最中は、「いっそ殺して」とか考えてしまうような過酷な撮影もありますし、この間なんかいい大人なのにトイレで3回泣きました。

ちぷたそ  好きでやってることなのに、つらさ!

N子さん  コスプレは「部活」みたいな感じです。体育会系よりの文化部だから演劇部が近いイメージ。

衣装 N子さんによる、刀剣乱舞のコスプレ小道具解説「防具は基本的に設定資料集を見ながら作ります! 材料はリアラボード(ライオンボード)とかダイソーのEVAシートです。塗装も自分でするよ。できるだけ安価に、それらしくみえるように工夫。防具のひもは全部通してあります。何メートル使ったか分からん。刀は1000円の木製刀を改造。ネットの情報を参考にしました」

レイヤー以外の人との交流もウエルカム

ちぷたそ  そんな思いまでして撮った写真は、さぞやそれぞれ思い入れがあるんだろうなぁ。N子さんもTwitterによくあげてますもんね。

N子さん  みんなかまってほしくてTwitterに写真をあげるところもあるので。皆さんの疑問の中にも「かまってちゃんのイメージがある」とありましたが。というか、98%かまってちゃんだから! そこは否定しません。

 コス写真がすごい盛れると、「カメラマンさんが撮ってくれたの−、ママー見てー!!」となります(※実際に母親に見せるわけではない)。「ママー、きれいに撮ってもらったのーママー」って思いながら写真を投稿する。だから「よしよし、よかったねと、いいねを押してもらえるとすごいよろこぶ。「いいね」は「よかったね、かっこよく撮れたね」という意思表示だと思っています。

もん絶 いいねされると、レイヤーさんはフローリングを転がっているのか……(※個人差があります)

ちぷたそ  笑う。レイヤーさんのあげる写真はかっこいいのに、裏でこんなこと考えてるって思うと一気に親近感がわきます(笑)。

N子さん  「ママー見てーーー」って気持ちだから、いいねしてもらえると「ヴわあ〜〜〜」とか言ってフローリングを転がってる。

ちぷたそ  だから! コス写真とのギャップ!! その事実、レイヤーさんと仲良くなりたかったり、一方的に神だと思ったりしている人には勇気を与えられるんじゃないでしょうか。

N子さん  あと、イベントで「スマホで写真を撮るのは失礼に当たりませんか?」と聞かれることがあるんですけど、全然そんなことない! 私は、「写真撮っていいですか」って声かけられるのめちゃくちゃうれしいし、スマホでもウエルカムだし、どんどん話しかけてほしいという気持ちなんだけど、「一眼レフじゃないと撮っちゃダメ」という認識が一部で広まってしまっているみたいなんです。そんなことないよって知らしめたいんです。

ちぷたそ  その話は私もネット上で見かけたことがあります。もちろん、そういった認識は個人差があるんでしょうけど、こういう話が問題として浮上してくるのはN子さんが言っていた「レイヤーの闇」という言葉を思い出してしまいますね……。


 今回は、カメラマンとレイヤーの関係性や、写真を「いいね」されるとフローリングを転がっているという意外な(?)一面、そして「かまってちゃんっぽい」という疑問への回答などについて語ってもらいました。次回のテーマは、コスプレに関わる「お金の問題」。衣装代や遠征費は一体いくらかかるのか? 果たしてコスプレイヤーはもうかるのか? 気になる質問を聞いてきましたのでお楽しみに。

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