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「君の名は。」だけじゃない 「2016年アニメ」の話題を“超個人的に”振り返る

» 2016年12月17日 06時00分 公開

 2016年は、映画「君の名は。」が興行収入200億円を突破(12月5日時点)し、「ガールズ&パンツァー 劇場版」が1年以上のロングラン上映を記録するなど、例年よりもアニメ作品に大きな注目が集まる年となりました。

 地上波でも数多くのアニメが放送されましたが、そんな話題の絶えない「2016年アニメの注目トピックス」を、ITmediaでこれまで紹介してきた記事を中心に振り返ってみようと思います。

君の名は。 映画「君の名は。」が興行収入200億円を突破(画像は公式サイトより引用)

「キンプリ」が火をつけた「応援上映」

 2016年は、「映画館ではお静かに」というお約束を根底から覆す、「応援上映」が話題になりました。応援上映とは、「大声でスクリーンの中のキャラクターを応援しながら鑑賞する」スタイルのこと。声援やコールだけでなく、コスプレやサイリウムの使用も許可されており、劇場内がライブ会場のような雰囲気になります。

 この応援上映に火をつけたのが、1月に放映を開始した劇場アニメ「KING OF PRISM by PrettyRhythm」(以下、キンプリ)です。

キンプリ ©T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

 応援上映の試み自体は、キンプリを生み出したスタッフたちを中心に、「劇場版 プリティーリズム・オールスターセレクション プリズムショー☆ベストテン」(14年3月公開)から継続して行われていましたが、これほど話題になったのはキンプリが初めてでした。

 観客がTwitterで体験レポート漫画をアップしたり、ブログで応援上映の様子を紹介したりしたことで、「よく分からないけど、すごく面白い映画があるらしい」と口コミが広がり、当初1カ月で上映終了するはずだった予定が、結果半年以上続くロングヒットとなりました。

キンプリ
キンプリ

 キンプリの成功を機に、「シン・ゴジラ」や「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」など、他の映画でも「大声で応援する」上映スタイルが続々と採用されました。来年以降、「映画鑑賞のあり方」がさらに形を変えて進化していくかもしれません。

「おそ松女子」急増! 「おそ松さん」ブームの到来

 2015年から翌年にかけて放送された「おそ松さん」は、予想できない斜め上の展開や、振り切った作風が話題となり、連日Twitterのトレンドを独占する大ヒットとなりました。

おそ松 「おそ松さん」©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会(公式サイトより引用)

 おそ松さんは、半世紀以上前に放送された「おそ松くん」に登場する6つ子が大人(ニート)になった姿を描いたもので、他作品のパロディーあり、ブラックジョークありと、毎回視聴者の予想をはるかに飛び越えていく怒涛(どとう)の展開がファンの心をがっちりとつかみました。また、女性たちに人気のある男性声優たちを起用したのも大きな特徴です。

おそ松 6つ子の声優陣(公式サイトより引用)

 ITmediaでは、おそ松さんにハマる「おそ松ガール」たちを集め、座談会を開催。その魅力を大いに語ってもらい、大変盛り上がりました。

 「6つ子の関係性に萌えている」「おそ松ガールはだめんず好き」「おそ松さんのアニメは耳で覚えるスピードラーニング」など、数々の名言が飛び出しましたが、「純粋にギャグアニメとして楽しんでいる男性たちも少なくない」とあるように、幅広い層に楽しまれる作品となりました。ギャグマンガ界の巨匠・赤塚不二夫先生の作品が、時を超えて若者たちに愛される瞬間でした。

「NEW GAME!」に“あのゲーム”が登場したワケ

 「まんがタイムきららキャラット」で連載している4コマ漫画が原作のアニメ「NEW GAME!」。ゲーム会社で働く女の子たちの日常を描いた本作に、知る人ぞ知る“あのゲーム”が登場したことが、一部ネットで話題となりました。

キービジュアル 「NEW GAME!」©得能正太郎・芳文社/NEW GAME!製作委員会(画像は公式サイトより引用)

 注目したいのは、主人公たちが自社で開発したゲームの偵察で「東京ゲーム展」に向かう、第11話「リーク画像が昨日、ネットに出てましたよ!」です。

 そのゲームの正体は、1998年に登場した3D格闘ゲーム「エアガイツ」。アーケード版登場後に、スクウェアからPlayStation用ソフトが発売されたことから、アニメ内ではスフィアエスニックブースの「レアガイズ」として登場しています。

エアガイツ エアガイツのロゴ(画像はAmazonより引用)

 他のブースでは、誰もが知る看板タイトルのパロディーが多い中、なぜエアガイツが登場したのでしょうか。その理由を背景スタッフの方に聞いてみました。

 「最初は『ファイナルファンタジー』の看板にする予定だったのですが、いちからオリジナルのキャラクターを考えるのは大変で、ありきたりなパロディーになってしまうなと思いました。

 そこで、普段仕事中に流している高田馬場ゲームセンターミカドの動画でよく耳にする『エアガイツ仮面』というプレイヤーを思い出し、エアガイツはスクウェアの作品で、ロゴも比較的簡単に作れそうだということで採用に至りました。ちょっとマニアックなネタを入れてみたくなったという、アニメ背景スタッフならではのこだわりもあります。

 ミカドでは昔懐かしい格闘ゲームのイベントが連日開催され、盛り上がっています。こんな珍しい人がまだいたのかという驚きも込めて『希少(レア)な野郎共(ガイズ)』というタイトルを付けました。

 また、家庭用のエアガイツにある『クエストモード』は、敵を倒して肉をゲットして食べるという狩りの要素があり、自分の中でグルメサバイバル的な内容だなと思っていました。そこで、ステーキの『レア』ともかけて、上下の両端にナイフとフォークを配置してみました」(背景スタッフ)

 何気なく見ていると思わず見逃してしまいそうな一瞬に、背景スタッフの熱いこだわりがこれでもかと詰め込まれていることが分かります。

 エアガイツ仮面とは、ねとらぼでも取材した「第2回エアガイツ世界大会」の優勝者であり、ミカドでさまざまな格闘ゲームをプレイする強豪プレイヤーのこと(と同時に、エアガイツプレイヤーを総じて「エアガイツ仮面」と呼ぶことも)。かなり昔のゲームなので、そもそも元ネタに気付かない視聴者も多い中、コアなファンの間では「制作スタッフの中にエアガイツ仮面がいるぞ!」と、有名プレイヤーが起こした奇跡に盛り上がりました。

 2015年の末には、ゲームバランスを崩すほどのバグ技が17年越しに発見されるなど、何かと話題になるエアガイツ。2017年も、ゲームシーンに新たなサプライズを提供してくれるかもしれません。

エアガイツ エアガイツのプレイ画面(YouTubeのミカド公式動画から引用)

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