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話題の「BALMUDA The Gohan」――“蒸気炊き”に辿り着くまでの長い道のり滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2017年02月08日 00時01分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 バルミューダが満を持して発表した炊飯器「BALMUDA The Gohan」について、製品開発のキーパーソン2人に話を聞いた。1人は同社の寺尾玄社長、もう1人は開発チームの中心メンバーである唐澤明人氏だ。彼らはどのようにして“蒸気炊き”というユニークな構造に辿り着いたのだろうか。

バルミューダ初の炊飯器「BALMUDA The Gohan」。実勢価格は4万4820円(2月下旬出荷予定)
バルミューダの寺尾玄社長

 思い起こせば2年前(2015年5月)、もはや進化の余地はないと思われていたトースター市場に画期的な新製品「BALMUDA The Toaster」を投入し、一大旋風を巻き起こしたバルミューダ。同社の調理家電が目指す方向性を示すキーワード「Hello Kitchen!」の話が出るたび、寺尾社長は炊飯器の存在を匂わせていたような気がする。理由は明白で、寺尾氏は朝食こそパン派だが、夕食はごはん派。朝食の美味しいパン同様、夕食の美味しいごはんは不可欠な存在だからだ。

2016年11月には蒸気が立ち上るティーザー(予告)サイトが立ち上がった。これまでのバルミューダにはない演出方法だった

 「『BALMUDA The Toaster』を自宅で使うようになって、朝食がすごく美味しくなりました。するとスキレットを買ったり、食材を選んだりして、朝食がさらに上質な体験になっていったのです。それなら夕食だって自然と上質にしたくなるのが自然ですよね?」(寺尾氏)

 実は、一般的な炊飯器で炊いたごはんが苦手だという寺尾氏。自宅では土鍋を用いて、ごはんを炊いていたという。そして土鍋で炊くごはんの味には満足していたが、どうしても気になることがあった。

 「土鍋でごはんを炊くと、コンロを1つ占有してしまいます。料理の一番大事な時間帯にこれでは、やっぱり料理がしにくい。土鍋で炊いたごはんの味を電気で再現できたらいいな……と思ったのが開発を決意したきっかけです」

 BALMUDA The Gohanが目指したのは、土鍋で炊いた、粒立ちがよい食感、鼻に抜けるような香ばしい香りのするごはんだった。だが、炊飯器を開発する中で、理想のごはんが炊けるなら、別に炊飯器ではなく、理想のごはん自体を開発すればいいのでは? という、あらぬ方向に開発が進んでしまったこともあった。

 「開発過程において、『良いお米は美味しい』という至極当然なことに気づいた開発陣は、『それなら美味しいお米をバルミューダが提供すればいい、目的は同じではないか』と考えたこともありました。そのため、実際に冷凍ごはんの研究を始め、液体窒素でごはんを凍らせてみたり、食品メーカーに瞬間冷凍のやり方を学びに行ったこともありました」

 いわゆる“レンジでチン”するごはんの開発に着手したというバルミューダの炊飯器開発チーム。だが、それを途中で止めてしまったのはなぜだろう。

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