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» 2017年12月30日 06時00分 公開

果敢なチャレンジ精神に天晴!――「麻倉怜士のデジタルトップテン」(中編) (3/4)

[天野透,ITmedia]

第5位:シャープ8K

麻倉氏:第5位は残念感漂うソニーのホームオーディオ部門とは正反対、チャレンジ精神旺盛なシャープの8Kに関する取り組みがランクインです。それにしてもシャープ、現在絶好調ですよね。東証1部再上場で、その時の戴社長は“8Kキャップ”を冠って報道陣の前に姿を表しました。この4、5年はとっても元気がなかったですが、やはり「目の付け所がシャープでしょ」なわけで、日本初のシャーペンやテレビなど、先駆けてやるのがとってもシャープらしいです。

 8Kで重要な点、まず1つは他人がやっていないということ。これから8Kが広がれば果実が得られるでしょう。もう1つは目標設定、組織をまとめる力が出てきたということ。IFAでも戴社長が「Sharp is back!」と宣言して鮮烈な印象を与えました。

――今思い返しても素晴らしいカンファレンスでした。トップは自らの責任において大きく旗を振り、側近以下ブレーンがその行動を強力にサポートする。理想の組織運営です

鴻海グループと共に、シャープ復活の立役者となった戴正呉社長。強力なリーダーシップと鮮烈なメッセージ性で、会社が進むべき道を明確に示した

麻倉氏:そんな8Kですが、一方で「テレビのトレンドはOLEDなのに、どうして今8Kをやっているの?」という疑問も当然出てくるでしょう。

シャープは液晶において亀山以来、自社パネルを使って商品価値を上げてきた過去があります。世に言う「亀山ブランド」はあるところまで成功を収め、近年ではその固執がシャープ凋落の原因と語られてきました。でもこれはやっぱり正しいんです。なぜかと言うと、OLEDは確かに素晴らしいですが、現状はパネルがすべてLGディスプレイのものです。なので、メーカーの特徴は絵作りでしか出せません。

 一方シャープは、まず8Kパネルをきちっと自製している。次に自社でちゃんとセットしている。さらにきちっと絵作りをしている。つまりデバイスかにの垂直統合に一貫した論理性があります。将来的にはOLEDでやろうともしていますが、現状で8Kはまだ液晶でないと作れません。ここで8Kをテコに、もう一度「液晶のシャープ」を復活させようとしているわけです。なかなか凄い計画ですね。

 一方で「8Kになったって見るものが無い」という意見も当然出てきます。確かに現状8K放送はNHKの1chしかありませんが、テレビ放送しか無かった昔と違って、現代の映像メディアはOTTなどもあります。その上通信は2020年頃に5Gになろうかとしています。その暁には携帯通信で数100Mbpsのやり取りをするようになるわけですが、放送の8Kはだいたい100Mbpsくらい。これだけ帯域があれば8Kを充分乗せられるのです。

ついに出てきた民生用8Kテレビ「AQUOS 8K LC-70X500」。これを含め、今年のシャープは快進撃を見せ、ついに東証一部へ返り咲いた

――4Kだって放送はBSしか無いですが、放送以外ではプライムビデオなどのOTTに、YouTubeなどの動画サイト、UHD BDというパッケージメディア、もう少し視野を広げればPS4やXbox Oneなどのゲーム機、さらに言うとPCを接続してのPCゲームに、ムービーカメラやハイエンドスマホで撮影した映像だってアリなわけです

麻倉氏:映像メディアは随分と幅が広がりました。4Kでもそうですが、今ニューフォーマットの権力は放送ではなく、どんどん新しいものを採用できるネットになってきています。業界の現状を鑑みるに、4Kが8Kになっていくという方向性が見えてくるわけで、それには機材や編集装置、ネットワークなどが整備されないといけません。これらがシャープが言うところの“エコシステム”というわけです。

 このエコシステム創造というやり方も日本のエレキで初。今までは放送局があり、その放送局が作ったものを端末として受け取っていただけでした。対して8Kはゼロからのスタートです。手始めに8K開発に定評のあるアストロデザインをホンハイ陣営に引き込み、その編集機材などを上手く使おうと作戦を練っている様子です。何を隠そう、この前シャープで出てきた小型8Kカメラですが、アレはカンペキにアストロデザイン製なんですから。

 私が良いだろうと思う作戦は、ポスプロなど世界の有力筋に機材をタダで配り、コンテンツを積極的に作ってもらうこと。後はディストリビュートするような会社を用意して、得意の端末をどんどん広めていけばいいわけです。ホンハイグループ入りすることで資金力も付き、ディストーションの力も付いてきました。今のシャープならば、やろうと思えばそんな大胆な作戦も可能です。

 エコシステムというところは、現状だとなかなか日本メーカーだけではできず、勢いも資金力もある中国メーカーと共同して世界を拓いていく必要があります。コレも新しい切り口の1つです。現在は放送だけではなく、医療、産業、印刷、博物館、研究など、あらゆる場面で“4K以上の価値”が求められており、“8K”の可能性はまさに“∞(無限大)”です。

 考えてみれば、4Kというものは2K時代には確かに価値がありましたが、今はもう既に4K時代に突入しました。つまり、新事業としての4Kは、4K時代になると価値ナシです。これがもし8Kで撮り、ダウンコンバートして4Kで使うとなると、これからやってくるであろう8K時代でもネイティブ8Kで使えます。こんな流れがこれから出てくる、それらをさらに加速しようというシャープのやり方は、なかなかに天晴です。

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