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条件がよければ固定網より速い!? ドコモのLTE 「Xi」100Mbpsサービスの実力神尾寿のMobile+Views

NTTドコモが、11月16日に対応するスマートフォンを発売するのに合わせて、一部地域で「Xi」の通信速度を下り最大100Mbps、上り最大37.5Mbpsに高速化する。そのスピードを、一足速く体験できたのでリポートする。

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 「LTE」という言葉が脚光を浴びている。

 周知のとおり、LTEはLong Term Evolutionの略で、第3.9世代に属する通信方式の総称だ(※)。日本では2010年12月24日にNTTドコモが国内初のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」を開始。約2年間をかけて、サービスの普及拡大に努めてきた。現時点でのXiユーザー数は671万強、Xiに対応した端末も約30モデルを数える。さらにドコモでは、すべてのXiスマートフォンでテザリングの提供を開始しており、通信利用量の大きいWi-Fiルーターも投入している。ドコモのLTEは、すでに同社にとって「主力インフラ」になっているのだ。

※2010年10月にITUで「第3.9世代通信方式(3.9G)であるLTEを、サービス名称において4Gと呼称すること」が認められたため、現在はLTEサービスを4Gと呼称するキャリアも存在する。

 そして2012年を迎え、LTEを取りまく環境が変わってきた。国内2番目のLTEサービスとして、イー・アクセスが3月に「EMOBILE LTE」を開始したのに続き、Appleの「iPhone 5」がLTEに対応したのに合わせて、KDDIとソフトバンクモバイルが9月からLTEサービスの提供を開始した。各社はドコモに比べてLTEのインフラあたりのユーザー数が現時点では桁違いに少ないため、当面は実効通信速度においてドコモを上まわりやすいという「後発の強み」を持つ。かくて通信事業者4社がLTEサービスでそろい踏みし、競争が激しくなったことで、がぜん、"LTE"が市場全体で注目されるようになったのである。

 そのような中で、11月16日から、ドコモがXiの通信速度を下り最大100Mbps、上り最大37.5Mbpsまで引き上げる。これは1.5GHz帯の15MHz幅×2を用いたものであり、当初は宮城県、新潟県など12県の一部エリアからスタートする。周波数の再編・整理の関係で、2014年度までは"東名阪を除いた地方"が対象であるが、LTEユーザーの多いドコモにとって、この高速化は注目のものと言えるだろう。

 筆者は今回、11月16日のXi 100Mbpsサービス開始前に、新潟県新潟市の一部対象エリアで、このサービスを体験・取材する機会を得た。そこで今回は、Xi 100Mbpsの実力がどれほどのものかリポートしたい。

通信速度は下りで最大88Mbpsを記録

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新潟県新潟市でテストした

 新潟県新潟市の某所。海から吹き抜ける風に身をさらしながら、筆者はXi 100Mbpsに対応した「Galaxy Note II」を手にしていた。Xiの100Mbps化は、当初は、必ずしも駅周辺や繁華街から始まるわけではないという。周辺の利用環境への影響を鑑みながら、いち早く100Mbps化が可能な場所から対応させていくという方針だ。

 今回のテストでは、新潟市の一部エリアの中から、2カ所の100Mbps化対応済み基地局を訪問。11月16日に発売されるGalaxy Note IIと「Xperia AX」の製品版を借りて、「RBB TODAY SPEED TEST」アプリを用いて通信速度を計測した。またドコモ社員が行ったUSBテザリング状態でのベンチマークテストの取材も行った。

 まずはその結果から見てみよう。

Photo
100Mbps化されたXiの基地局。といっても、基地局のアンテナなどは変える必要はなく、基地局設備内のボード交換で対応できるという

 最初にテストした新潟市郊外の基地局では、RBB TODAY SPEED TESTの結果で、最高で下り88.7Mbps、上り24.21Mbpsを記録。5回平均でも下り81.43Mbps、上り23.01Mbpsと安定的に速い結果になった。今回は対応端末が発売されていない時期だったので、周辺に他のユーザーがおらず、ほぼスペック通りの結果が出たという形だ。ちなみに筆者とは別に、ドコモ側でもベンチマークテストを行っていたのだが、そちらでも下りで80〜90Mbps、上りで20Mbps前後の速度が出ていた。

 次に同じ新潟市でもやや住宅地の中にある基地局のエリアに移動してテスト。ここでは基地局からやや離れた場所で試したこともあり、1回目よりは速度が若干低下し、下りで55Mbps〜60Mbps、上りで15Mbps前後の数字となった。初回で100Mbps近い速度を体験していただけに少しインパクトが薄かったが、それでも従来のLTEサービスはもちろん、一般的な集合住宅向けのFTTHにも引けを取らない実効通信速度が出ていることになる。

地点A
  ダウンロード速度(Mbps) アップロード速度(Mbps) Ping(ミリ秒)
1回目 76.94 27.57 106
2回目 88.7 24.21 173
3回目 81.83 26.4 115
4回目 75.32 18.15 220
5回目 84.36 18.75 118
平均 81.43 23.016 146.4

地点B
  ダウンロード速度(Mbps) アップロード速度(Mbps) Ping(ミリ秒)
1回目 55.12 15.6 146
2回目 60.87 13.02 106
3回目 60.7 14.77 107
4回目 56.1 15.32 106
5回目 58.03 17.65 113
平均 58.164 15.272 115.6
Xi 100Mbpsエリアでのベンチマークテスト。RBB SPEED TESTアプリを用いて、同一場所で5回計測。その平均値も出した。

PhotoPhoto 新潟市郊外にある基地局(画面=左)では、Xi 100Mbps化のスペックに近い下り80〜90Mbpsの実効通信速度が出た。住宅街にある基地局(画面=右)では実効通信速度は落ちたが、それでも下り50Mbps以上、上りで15Mbps前後のスピードが出ている
Photo
ドコモが行ったPCでのベンチマークテスト。USBテザリングモードで実効通信速度を測ったところ、80Mbps以上のスピードが出ている。これほどの速度になると、Wi-FiではなくUSBケーブル接続でのテザリングの方がよくなるだろう

 これだけのスピードが出ていると、Webの表示はもちろん、動画の再生もすぐに始まり、地図の表示も一瞬だ。また、予想以上に恩恵を感じたのが上り速度の向上である。最近ではTwitterやFacebookをはじめソーシャルメディアの普及・発展で写真をアップロードすることが以前よりも増えたが、この高速化されたXiインフラだと、写真の送信・投稿もほぼ一瞬で終わる。最近のスマートフォンの使い方を考えると、この「上りの高速化」も注目と言えるだろう。

高速化の効果は十分 東名阪エリアの対応が待たれる

 今回のXi 100Mbps化のテストはサービス開始前に行ったため、実効通信速度がほぼスペック通りの形で出たのは、いわば当然である。しかし、それを理解した上で見ても、高速化の恩恵は大きいと言えるだろう。1.5GHz帯のLTEが利用できる端末が今年の冬商戦モデルからということもあり、100Mbps化の対象エリア内では実効通信速度向上のメリットは大きく、その恩恵は長く受けられそうだ。

 一方で、これだけの実力を見せつけられると、これが「東名阪エリアで使えない」ことが残念でならない。これらの都市部ではXiユーザーが爆発的に増えた結果、実効通信速度が落ちてきているからだ。ドコモでは「2014年初頭(の周波数の再編・整理が終わる)までに基地局の開設自体は進めていく方針」(広報部)である。1.5GHz帯の周波数が利用可能になったとき、東名阪での高速化エリアが一気に立ち上がることに期待したいところだ。

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