イー・アクセス版「Nexus 5」の狙い/LG「isai」の開発経緯/シャープスマホの強み:石野純也のMobile Eye(10月28日〜11月8日)(2/3 ページ)
今回の連載では端末に焦点を当て、11月1日に発表された「Nexus 5」のイー・アクセス版、KDDIとLGエレクトロニクスが共同開発した「isai」、そしてシャープ冬モデルの狙いについて、解説していきたい。
「isai」の共同企画で互いの強みを生かすKDDIとLG
キャリアのKDDIとグローバルメーカーのLGエレクトロニクスが、日本市場に向けて共同で開発した端末――それが、11月に発売を予定している「isai」だ。isaiはグローバルモデルにはない防水といった特徴を持ち、ホームスクリーンも独自のものを採用。サイドにメタルフレームを使ったデザインも、共同開発の成果だ。
11月5日に韓国で行われたプレス向けイベントでは、両社の関係者がこの端末の狙いを語った。日本で商品企画を担当するキム・ヒチョル(金希哲)氏によると、「昨年投入した『Optimus G』が予想以上に内部や市場からの反応がよかった。これを受けて、共同企画のお話をKDDIからいただいた」という。LG製の端末は、レスポンスのよさや、日本市場で求められる機能への対応が早く、ユーザーからの評判は決して悪くなかった。一方で、「商品を作る実力や技術は認められたが、日本のお客様に伝える力がまだ十分でなかった」とMC日本マーケティング担当 常務のベ・ヒョンキ氏は話す。使えば満足するが、そこに至らないというジレンマがあったというわけだ。
共同企画の狙いは、「KDDIの販売力とLGの商品力が上手く合えば、非常にいい結果を残せる」(ベ氏)ところにある。これはKDDIの思惑とも合致する。グローバルモデルのスマートフォンが普及し、複数のキャリアに同じ端末が並ぶことは当たり前になった。冬商戦ではiPhoneが3社横並びになり、「Xperia Z1」や「GALAXY Note 3」といった端末もドコモとKDDIの2社から発売されている。isaiの特徴であるホームスクリーンを担当した商品統括本部 山口昌志氏も「他キャリアでも同じ端末が面で並ぶ中、何かしらKDDIの特徴を出し、差別化されたモデルを出していきたいという想いもあって、一緒に端末を開発した」と語る。「そう考えたとき、ベストなケースは、メーカーと一緒になってオリジナリティをどう出すのかというアプローチ」(同)だった。
isaiは、一部機能を「LG G2」などから受け継いでいるが、デザインはゼロから起こしたものだ。デザインのモチーフは「水」。コップに注がれた水が表面張力で描く曲線を表現したボディや、端末のカラーバリエーション、UIにこうしたコンセプトが貫かれている。KDDI端末のデザインを監修するKom&Co.Designの小牟田啓博氏は「普遍的なものであり、必要不可欠なもののモチーフとして、水にフォーカスした」と、その理由を説明する。「マーケティング上、ブルーの実績が堅調に伸びている」というトレンドカラーも、水をモチーフにする後押しになった。
端末のデザインにあたって日本を訪れ、ユーザーの趣向をリサーチしたというMCデザイン研究所PRMデザインチーム 主席研究員 パク・ホンギュ(朴洪圭)氏は「日本のユーザーは個性を大事する。人と同じものと少し違うものを求めるが、あまり異質なものに対しては取っつきにくいと感じる。ある意味相反するニーズがある」と語る。
この相反するニーズを満たすため、デザインコンセプトの水とは真逆のメタルフレームを採用。この部分に金属素材を用いるのは「LGの中では初の試みだった」(パク氏)という。こうした挑戦ができたのは、「グローバルモデルとオリジナル企画では、まず物量が違う」(同)ためだ。朴氏が「新しいことは、イコールでリスクにもなる。グローバルの物量が必要なモデルでは、なかなか踏み切れない。逆にこういう地域特化のモデルは、LGとして果敢にチャレンジできる」と語るように、ロットが少ない分、挑戦できる要素が多かったという。
KDDI側が戸惑ったのは、防水仕様に対する意識の違いだった。小牟田氏は「難しかったのはやはり防水」と述べ、次のように説明する。
「防水をやることの必然性を理解してもらうのに、時間を費やした。(LGのようなグローバルメーカーは)防水を入れることの外観的なダメージに、まず目が行く。そして、防水は商品力があるのかという話になってしまう。それが美しいことは分かるが、防水がないことで売れるメーカーは正直日本では非常に少ない」
スマートフォンの顔であるホームスクリーンは、新たに「isaiスクリーン」を両社共同で開発した。キム・ヒチョル氏によると、「これもLGの中では大きな決断だった。ホームスクリーンを1つの事業者向けにカスタマイズするのは、初めての試み」という。コンセプトは「モバイルザッピングUI」だとMC研究所 D3室 第4チーム 主任のキム・ナムギ(金楠起)氏は話す。「左右にフリックで、4つのユーザーエクスペリエンスをザッピングすることを表現した」というホームスクリーンには、それぞれSNS、動画、ニュース、トレンドが並び、各情報は縦にスクロールできる。ここに、「auスマートパス」や各種ネットサービスの情報を流していくというのが、isaiスクリーンの考え方になる。
KDDIのオリジナルUIといえば、INFOBARシリーズに搭載された縦スクロールの「iida UI」が記憶に新しいが、isaiスクリーンはあくまでAndroidの基本的な作法にのっとっている。これについて問われたキム・ナムギ氏は「バランスが重要」としながら、「すべてを変えてしまうのはユーザーの使用パターンを変えてしまうことにもなる。そのバランスを取ることが悩みだったが、LGのホーム画面のいいところはそのまま残し、あとの部分で大きな変更をできるか、KDDIと話し合いながら決まったのが4つのカテゴリー(SNS、動画、ニュース、トレンド)」と語る。山口氏も「通常のAndroidの使用性はどこまで残した方がいいのかという議論はあった。その上で、isaiは幅広いお客様に使っていただきたいため、通常のAndroidの使い方はキープした上で、使い勝手をどう良くしていくかの議論になった」と口をそろえる。
このように、isaiはLGの持つ技術を生かしながら、デザインやUIにはKDDIのノウハウが注ぎ込まれている端末だ。キャリアとメーカーの共同企画の成功事例になるのか、今後の展開に注目しておきたい。
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