2014年度、国内市場でAndroid端末ナンバーワンメーカーを目指す――シャープ:IGZOの“ノウハウ”が強み
シャープはこの冬(一部は春)商戦で、計7機種のスマートフォンを投入する。これらの新機種でシャープが重点的に取り組んできたことは「7つ」ある。そして11月7日の説明会では、2014年度に国内でAndroid端末ナンバーワンメーカーを目指す――という目標も明かした。
シャープが11月7日、スマートフォンの新製品に関する説明会を実施。常務執行役員 通信システム事業統轄 兼 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏が、同社の事業ビジョンと、今冬に発売される新製品の特徴を紹介した。
説明会の冒頭では、スマートフォンやタブレットの未来を紹介するビデオを上映。そこでは、買い物中の男性が、売り物の洋服にスマートフォンをかざすと、その洋服の情報がスマホの画面上に表示されるシーンや、会議中にタブレットで議事録を取って翻訳するといったシーンが紹介された。ここに登場するスマートフォンやタブレットには縁(フレーム)がなく、ディスプレイだけで占められている。
これらは、シャープが目指す事業ビジョンを具現化したもの。現在シャープが開発している「スマートプロダクト」に加え、「スマートデバイス」と「スマートサービス」へと事業領域を拡大していく考えだ。長谷川氏は「時計型やグラス型など、新しいスマートデバイスが活発になっているが、単なる周辺機器ではなく、スマートプロダクトをコアに新しいサービスと連動し、お客様の生活に密着できるボーダーレスなスマートライフの実現を目指す」と意気込みを語った。シャープが目指す方向性は通信キャリアとも合致しているとの考えから、「引き続き、キャリアと強いパートナーシップの構築を目指す」(長谷川氏)とした。
シャープがこの冬(一部は春)に投入するスマートフォンは、NTTドコモ向けが「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」「SH-01F DRAGON QUEST」「AQUOS PHONE EX SH-02F」「スマートフォン for ジュニア2 SH-03F」、au向けが「AQUOS PHONE SERIE SHL23」、ソフトバンク向けが「AQUOS PHONE Xx 302SH」「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」の計7機種。その中でシャープが“重点取り組み”として挙げるのが、以下に紹介する7つのポイントだ。
1つめが「IGZOの進化による長時間化」。今回はSH-03Fや302SHを除く5機種がIGZO液晶ディスプレイを搭載している。1秒間に60回の表示書き換えを行う従来の液晶に対し、IGZOでは静止画の表示中は1秒間に1回の書き換えで済む。動画についても、30フレーム/秒の動画なら1秒間に30回の書き換え、つまり従来の半分で済む。シャープはこの特性を「液晶アイドリングストップ」と呼んでいる。このIGZOをさらに進化させたのがSH-01Fだ。SH-01Fでは、IGZOの液晶アイドリングストップをより最適化するために新開発した省電力駆動ICと、透過率のアップしたカラーフィルターを搭載している。これらを組み合わせることで、省エネ性能が従来液晶より約20%向上したという。
SH-01Fは、ドコモが定めた「実使用時間」で過去最長となる98.9時間を実現。さらに、バッテリー100mAhあたりの実使用時間は、同じくIGZO液晶ディスプレイを搭載した2012年冬モデル「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」や2013年夏モデル「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」よりも向上した。長谷川氏は「燃費性能にこだわっていきたい」と話す。
2つめが「IGZOの進化による超高画質化」。これは4.5インチのフルHD IGZOディスプレイを搭載したSH-02Fと303SHを指したもの。これら2機種のディスプレイ画素密度は世界最高(シャープ調べ)となる487ppiを実現し、「グラビア写真を遥かに超える美しさ」と長谷川氏は胸を張る。
3つめが「液晶の進化による狭額縁化」。302SHでは、ディスプレイ占有率が80.5%という独自の三辺狭額縁設計により、幅を70ミリに抑えながらも5.2インチ液晶を搭載した。302SHを手にすると、まさにディスプレイそのものを持っているような感覚だ。照度センサーと近接センサーは従来どおりディスプレイの上にあるが、通話用のレシーバーは背面側に搭載し、ダクトから音を出すようにしているという。また、インカメラはディスプレイの下に備えた。新機種の中では唯一の5.2インチということもあってか、IGZOは採用していない。シャープ説明員は「サイズ感と画面の大きさを重視した」と話していた。
また、303SHも三辺狭額縁設計を採用しており、ディスプレイ占有率は75%に及ぶ。シャープはこの狭額縁化を「未来を予感する新スタイル」とし、「EDGEST」と呼んでいる。将来的には冒頭のビデオで紹介したような、フレームのないディスプレイ(究極のEDGEST)を目指す。「デザインという枠を超えて新しい価値を創造し、1つの絵に見えるような驚きの世界を提案したい」(長谷川氏)
4つめが「カメラの進化」。どこでも美しく撮ることにこだわり、今回はSH-01F、SH-02F、SHL23、302SH、303SHにF1.9の明るいレンズを搭載した。さらに、暗い場所で撮影する際に、複数の画像を合成する新開発の画像処理機能「NightCatch」により、「照度1ルクス以下でも明るく撮影できる」(長谷川氏)。このNightCatchはリアルタイムで処理をするので、撮影前の画面にも明るく表示される。
5つめが「ユーザーインタフェースの進化」。SH-01FとSHL23には、端末を持つだけでディスプレイが点灯、着信音量を抑える、画面が横に回転しない、といったことができる「グリップマジック」を新たに搭載した。
6つめが「新しい通信サービスへの対応」。SH-01FとSH-02Fはドコモの4つのLTEバンドに対応。SHL23はKDDIが訴求している800MHz帯のプラチナバンドのLTEをサポート。302SHと303SHはAXGPとFDD-LTEの両方をサポートする「Hybrid 4G LTE」仕様となっている。いずれのモデルも、各キャリアが展開しているLTE(4G)の周波数帯にフルに対応している。さらに、SH-01FとSH-02Fは1.7GHz帯、SHL23は2.1GHz帯において下り最大150Mbps、302SHと303SHはAXGPにおいて下り最大110Mbpsの通信が可能だ。
7つめが「ユーザーサポート」。シャープは11月7日にメーカーサイト「SH SHOW」をリニューアルし、初心者向けのスマートフォン活用術のコンテンツや、スマートフォン向け周辺機器(現時点で714アイテム)を紹介するコーナーなどを新設。周辺機器はSH SHOWから直接購入できるわけではなく、手軽に周辺機器を見つけてもらうことを目的とする。スマートウオッチなどの新しいタイプの周辺機器をシャープが自ら開発するかどうかは「そういったことに目を向けて検討していきたい」(長谷川氏)と言うに留めた。今後はSH SHOWで会員制のプレミアムサービスなどを提供することも視野に入れている。
シャープは「2014年度、国内市場においてAndroid端末ナンバーワンメーカーを目指す」という目標を掲げる。スマートフォンナンバーワンとしなかったのは、「iPhone 5sがドコモに導入されたことで市場状況が変わった」(長谷川氏)ため。また長谷川氏は「今後は長時間化が競争軸の1つになる」とみる。そのカギを握るのがIGZOだが、長時間のバッテリー持ちは「IGZOだけで実現しているわけではない」と同氏。「IGZOだけでも省エネに強いが、それ以上に、それ(IGZO)を使ったノウハウを入れ込んでいる。その優位点は特徴としてキープしていきたい」と強みを語った。
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