MVNO普及促進には何が必要なのか━━MNO対MVNOで見えてきた市場拡大への課題点:石川温のスマホ業界新聞
格安SIMカードやSIMフリースマホが増え、盛り上がりを見せつつあるMVNO市場。MNOとMVNO市場の主軸となるプレイヤーたちは、それぞれ何を考えているのだろうか。
3月6日、総務省と一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会が主催する「MVNO2.0フォーラム」が開催された。自分は基調講演において、ユーザーとメディア視点でMVNOの課題を語った。
ディスカッションには、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルといったMNOに加え、インターネットイニシアティブ、NECビッグローブ、日本通信の幹部も名を連ねるなど、日本のMVNOにおける現状を語る上で、結構なメンバーが揃ったように思えた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年3月8日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
テレコムサービス協会によれば、全移動体通信契約者数である1億5097万件のうち、MVNOの市場規模は1257万件、約8%の割合になるという。
しかし、1257万件のうち、約650万件となる51.4%は「MNOでもあるMVNO」なのだという。つまり、UQコミュニケーションズがKDDIにWiMAXスマホ用のネットワークを貸し出したり、WCPがソフトバンクにTD-LTE網を貸し出すMVNOが大半なのだ。
本来のMVNOは4%程度しかなく、そのなかでも独自のサービス展開を行っているのは2〜3%に過ぎないようだ。
最近では、SIMカードの販売が増えているようだが、NTTドコモの回線を使ったMVNOはNTTドコモ全契約者数のうち3%程度なのだという。格安SIMカードが人気なイメージがあるが、実際はまだまだニッチマーケットに過ぎない。
自分の基調講演では、MVNO市場が活性化するための課題として「本人確認制度の見直し」「キャッシュバックの見直し」「技適マーク認証の見直し」「MNOのMVNOに対する料金競争促進」を挙げた。
本人確認については「本人確認法があり、犯罪抑止のためには絶対に守らないといけない」というMNO側に対し、日本通信・福田尚久氏が「うちは、携帯電話の番号にひも付けるかたちでデータSIMカードの認証を行っている」とした。しかし、日本人であれば、すでに携帯電話番号を持ち、キャリアによって本人確認ができているのでいいが、訪日外国人にSIMカードを販売するといった場面においては、やはり何らかの対策が必要だろう。
キャッシュバックに関しては、NTTドコモ・吉澤和弘氏が「うちがコメントをするのも変な感じ。3月は一番の商戦期なので過熱しすぎている」と語るなど、キャッシュバックはKDDIやソフトバンク側から仕掛けられ、仕方なく対抗しているというスタンスを見せた。
KDDI・藤田元氏からは「いきなり(販売奨励金を)辞めると代理店への影響が出てくる。落ち着くところに落ち着かなくてはいけない」。ソフトバンクモバイル・徳永順二氏からは「キャッシュバックを率先してやりたいと思っているキャリアはいない。いずれ沈静化、適正化していくのではないか」とのコメントがあった。
今回、パネルディスカッションに参加していて感じたのが、MVNO、MNO、どちらも大人な方達ばかりなので、発言に遠慮が見られる気がした。MVNO側からすると、MNOは「回線をお借りしている立場」なだけに、突っ込んだ発言がしにくかったようにも感じた。ディスカッションの時間がもう少し長くあれば、MVNO側の本音ももう少し引き出せて、さらに身のある議論になったような気がしてならない。
今回のフォーラムを傍聴している観客からも指摘があったのだが、これは一度、MVNO事業者だけで、ディスカッションを行うと、もっとMNOに対する不満が出てきて、面白いことになるような気がするのだが。
MVNO普及の課題をあぶり出すという意味でも、是非とも別の機会を設けるといいと思う。
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