SIMを挿してデータ通信を始めるには?――設定手順を確認しよう:はじめての格安SIM&SIMフリースマホ 第4回
通信キャリアのスマートフォンを購入する場合と異なり、MVNOのSIMカードを使ってデータ通信を始めるまでの設定は、自分で行う必要がある。今回は適切なSIMカードの選び方や設定方法を解説したい。
一貫したサービスをショップで受けられる通常のキャリアとは異なり、格安SIMを提供するMVNOの場合、設定も自分で行わなければならない。次回以降で触れていくが、端末をセットで購入できないケースも多い。端末は自分で入手して、SIMカードをセットし、必要な設定を行うのが一般的な流れだ。今回は、SIMカードの基本から、インターネットに接続するための設定方法までを見ていきたい。
SIMのサイズを確認する
まず、現状のMVNOが発行するSIMカードは、サイズ別に3種類ある。標準SIM(miniSIMとも呼ぶ)、microSIM、nanoSIMの3サイズで、端末に合ったものを購入すればよい。この中に、契約者を識別するための情報が格納されている。これは、ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルといった回線を貸し出す側のキャリア(MNO)と同じだ。端末のSIMカードスロットとサイズが異なると、利用ができないので注意したい。端末を変えて必要なSIMカードのサイズも変わったら、キャリアに交換してもらう手がある。この際には、手数料がかかることが多い。
SMS対応のSIMを選ぶべき理由
データ通信専用のSIMカードで高速通信規格のLTEを利用するときは、SMS対応を選択するようにしたい。SMSはショート・メッセージ・サービスの略で、これ自体は直接LTEとは関係がない。ところが、端末側、特に電話の利用が大前提になっているスマートフォンでは、データ通信しかできないSIMカードを想定していない仕様になっているケースが多々ある。このために、SMS非対応のSIMカードだとLTEで通信ができなかったり、アンテナマークが表示されなかったりといった問題が起こる。
一般的な利用者には事情が分かりにくいところだが、MVNOがわざわざデータ通信用のSIMカードをSMS対応にしているのは、こうした仕様に対処するためという側面が強い。もちろん、SMS対応なら電話番号を認証に使うLINEのようなサービスも、簡単に登録できるメリットがある。3G端末を使うときも、アンテナマークが表示されないのは何かと不便。また、端末によってはバッテリーの消費量が増すという問題もあるようだ。SMS対応SIMカードを選べるなら、そうしておくに越したことはない。なお、ここではデータ通信専用のSIMカードについて紹介したが、音声通話対応のSIMカードには最初からSMSがセットになっているため、上記の問題は起こらない。
SIMを挿入してデータ通信を始めるまでの手順
上記を踏まえて適切なSIMカードを入手したら、端末に挿して電源を入れる。ここまでは、MNOでも流れはほぼ同じだ。すると、大抵の端末は初期設定のままなら自動的に電波をつかみにいく。ドコモの回線を借りたMVNOの場合は、画面上に「docomo」や「NTT DOCOMO」などと表示されるケースが多い。もし、自動的に電波をつかまないときは、電波のサーチをしてみよう。ここではAndroid(Android 4.4のNexus 5に準拠した)とiPhone、2つのプラットフォームでの手順を紹介する。SIMカードはIIJの「IIJmio高速モバイル/Dサービス」のものを利用したが、他社でもおおむね手順は同じだ。
Androidの場合は、「設定」→「その他」→「モバイルネットワーク」→「通信事業者」とタップしていくと、ネットワークの検索が始まる。しばらく時間が経つと、端末の対応する通信事業者一覧が表示される。ここで「自動的に選択」をタップすれば、SIMカードに合ったネットワークが選択される。ドコモの回線を使う格安SIMの場合は、ドコモにつながる。
iPhoneでも、手順はおおむね同じだ。「設定」→「キャリア」をタップすると、ネットワークの検索画面が表示される。標準では「自動」になっており、特に変更する必要はないが、何らかの事情で接続できないようなときは、ここを手動にしてみよう。ネットワークのサーチが始まり、iPhoneの対応するネットワークが表示される。ただし、どちらの場合も、その会社のネットワークが存在しない“圏外”の場所ではキャリア名が現れない。ここで表示されるのは、あくまで今接続できるネットワークだけだ。
無事ネットワークに接続できたら、あとは普通に使うだけ……と言いたいところだが、インターネットに接続するには、もう1つの手順を踏まなければならない。この状態では、電話とSMSができるだけ。携帯電話として最低限のネットワークに接続した段階ともいえるだろう。携帯電話のネットワークがインターネットに接続するためには、「アクセスポイント」というところを通過しなければならない。この情報が書かれた設定項目を「APN(アクセス・ポイント・ネーム)」と呼ぶ。MNOの場合は端末と回線をセットで提供することが基本となり、設定もあらかじめ行われている。一方で、MVNOの場合は自分でこれをやらなけれならない。ひと手間かかるが、その分、価格が安くなっているというわけだ。
APNの設定は、Androidの場合、「設定」→「その他」→「モバイルネットワーク」→「アクセスポイント名」で行う。ここで「+」をタップし、APNやユーザー名、パスワード(ユーザー名やパスワードは不要な場合もある)を入力していく。入力後、メニューから「保存」を選択。追加されたAPNのボタンをタップすればよい。なお、Nexus 5については、あらかじめMVNOのAPNまで端末に登録されており、ドコモのSIMカードを挿すとこれらがすべて表示される。確認した範囲では、日本通信とIIJのものが現れるため、この2社を利用しているようであれば、手動でAPNを入力する必要がなくなる。
iPhoneは「プロファイル」のインストールが必要
少々厄介なのが、iPhoneだ。iPhoneは、SIMカードの種類を判別し、自動的にAPNを設定してしまう。ここまではいいが、自動設定になると、APNを端末側から手動で編集できなくなってしまうことがある。格安SIMとの組み合わせで問題になるのはこの点で、iPhoneはMVNOのSIMカードをドコモのSIMカードと認識する。結果として、ドコモ用のAPNを自動で設定してしまい、しかも編集ができないのだ。
これを解決するのが、「プロファイル」となる。iPhoneには、プロファイルというデータを読み込み、内部の設定を自動的に変更する仕組みが用意されている。MNOはこれを、メールの設定やWi-Fiアクセスポイントの設定を自動で行うために利用しているが、プロファイルはAPNの変更にも対応している。MVNOの多くはこの仕組みを利用し、iPhone用にAPN設定のプロファイルを公開している。これをダウンロードして、iPhone内にインストールすれば、APNがMVNO用のものに書き換わる。
ここまで駆け足でSIMカードの選択から設定方法までを紹介してきたが、「じゃあ、その端末はどこで手に入れるの?」と疑問に思われた方もいるはずだ。次回以降は、MVNOの格安SIMで利用する端末について紹介していきたい。
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