News 2003年12月27日 02:12 AM 更新

「まだ終わらんよ」──そんな2003年だったかな(1/3)

64ビットプロセッサにPSX、そしてWinnyショック。なんのかんの言われながらいろいろあった今年を振り返ろう。

 IT不況のトンネルを抜け出したかに見えた2003年。しかし今さら目新しいものは期待できない──のかと思いつつ、それでもさまざまな技術や製品、サービスが登場して話題を集めた。「まだだ、まだ終わらんよ!」──そんな叫びが聞こえてきそうだった今年を振り返った。

「PS」頼み?のソニー

 “ソニーショック”がまだ生々しく語られていた5月28日。都内で開かれたソニーの経営方針説明会は異様な雰囲気になっていた。久夛良木健副社長が突然「PSX」のデモを始めたためだ


突然発表されたPSX


PSPコンセプトモデル

 わずか2週間前には携帯型ゲーム機「PSP」を2004年末に発売すると発表。さらにその3週間前には「CELL」プロセッサの生産に約2000億円を投資するとも発表していた。矢継ぎ早に出された半導体戦略やPSX/PSPなどをめぐるソニーの思惑に対しさまざまな観測が飛び交った。

 ただ、“モノづくりへのこだわり”を全面に押し出した「QUALIA」ブランドをスタートさせる一方、フラットTVやDVDレコーダーで出遅れた感は強かった。「コクーン」が打ち出した先端的なコンセプトは消費者には十分には受け入れられず、コクーンの良さとハイブリッドレコーダーの良さを融合した「スゴ録」の投入で挽回に挑んだ。しかしPSXとの切り分けなど、ソニー社外から見てどこかちぐはぐな感じがしたのは否めない。

 そのPSXは160GバイトHDD搭載で7万9800円などの情報が公開されると注目を集め、仕様変更にも関わらず販売は好調なようだ。

 ソニーの永遠のライバル・松下電器産業は、松下電工子会社化に必要なTOB資金1460億円を手持ち資金でまかなうというV字回復ぶり。電工の子会社化で、連結売り上げで国内電機トップに躍り出る。絶好調のDIGAや怒とうのラインアップで登場した3代目「D-snap」、フラットTVの新ブランド「VIERA」と、新・三種の神器への備えに余念はない。

 シャープは「AQUOS」やCGシリコンなど液晶が好調で、工場は増産に追われるなど同社が言う「オンリーワン技術」が実を結んでいる。東芝はDRAMを切り捨てて身軽になった半導体部門がNANDフラッシュの需要急拡大で好調なものの、PC部門が米Dellや米Hewlett-Packardとの価格競争で苦戦して赤字化し、明暗を分けた。

D・V・D!

 なぜかひっそりと発表されたソニーのBlu-ray Discレコーダー。CEATECでは各社がレコーダーを参考出品するも、実際の製品化でソニーに続くメーカーはまだない。


 東芝−NECのAODも「HD DVD」としてDVDフォーラムに一部承認され、NECは現行DVDも利用できるドライブを発表。ただ製品化はまだ先になると見られ、今は各社とも市場が急拡大しているDVDレコーダーを最優先にしているようだ。

 記録型DVDは高速化が進み、ドライブ自体は東京・秋葉原で1万円を切るなどCD-R/RWドライブ並みに普及が進んできたが、「煮ても焼いても食えない問題」──DVD違法コピー問題も顕在化してきた。著作権者側も何らかの対策を取る準備を進めているとされる。

デジカメは一眼レフが熱い

 “新・三種の神器”の一つ、デジタルカメラは今年も売れに売れた。ズームレンズを2段にして収納するハイテクぶりで驚かせたカシオ計算機の「EXILIM Zoom」は販売店頭で売り上げトップを長く独占し続けるなど、“薄く”“小さく”がメインストリームに。

 また松下の「LUMIX DMC-FZ10」やコニカミノルタ「DiMAGE A1」など、高倍率ズーム搭載機の発売も相次いだ。コンパクト機はコンパクトさを追求した気軽なモデルと、ハイエンドファンを満足させる高倍率ズームモデルの2つが今年の流れを決めていた。1/1.8インチ600万画素CCDも1月から量産が始まり、コンパクト機の高画素化もさらに進むだろう。

 しかし今年から来年にかけ、デジカメでもっとも熱くなりそうなのは一眼レフ機(DSLR)だろう。高価格からプロやハイアマ限定かと思われてきたDSLRだが、キヤノンが9月に「EOS Kiss Digital」を実売12万円で発売。実売20万円を切って“普及機”と呼ばれた「EOS 10D」と遜色ないスペックながら価格はこれをさらに下回り、「一眼レフも本格的なデジタル時代に入った」(キヤノンの御手洗冨士夫社長)ことを実感させた。


編集部でも速攻2人が購入したEOS Kiss Digital

 「F6」はどうなるのかと噂されつつDSLRフラッグシップ「ニコンD2H」を発売したニコン。普及機については静観するかに見えたが、12月になって「D70」を実売10万円台前半で来春発売すると発表。おそらく来年2月のPMAでお披露目されると思われるが、ボーナス商戦前というタイミングでの突然の開発表明だっただけに「EOSへの乗り換えをけん制したのでは」と見る関係者も。

 「OM」の開発を止めたオリンパスは4/3インチCCDの「E-1」で一眼レフの世界に帰ってきた。板橋の老舗ペンタックスも「*ist D」を発売してKマウントファンを喜ばせた。シグマも引き続きFoveonセンサーを採用した「SD10」を発表している。

 35ミリシステム一眼レフを擁するカメラメーカーでレンズ交換式DSLRに参入していないのは「α」のコニカミノルタのみとなったが、いずれ何らかの動きがありそうだ。レンズ交換の楽しみを知っている写真ファンにとって、来年はさらにホットな1年になるのは間違いない。

Winnyショック

[小林伸也&岡田有花, ITmedia]

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