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盗撮防止法はカメラ付き携帯に歯止めをかけるか(1/2 ページ)

» 2004年07月27日 17時36分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米連邦議会で「Video Voyeurism Prevention Act of 2004」がこのままほぼ反対もなく進んでいけば、もうすぐ米国ではカメラ付き携帯電話による盗撮が違法行為になるだろう。

 この法案は、国民のプライバシーをカメラ付き携帯による盗撮から守ることを目的としたもので、あとは下院を通過し、大統領の署名を受ければ成立する状態にある。連邦議会では休会前の先週はこの法案を審議しなかったが、支持者は年内に可決される可能性が高いと主張している。

 それでも携帯電話メーカーは、積極的に反対はしていないものの、カメラ付き携帯による盗撮を違法とすることに静かに懐疑の目を向けている。

高まる関心

 Video Voyeurism Prevention Actは、「プライバシーが期待されるのが妥当な」あらゆる場所において、着衣のない人物を同意なしに写真・ビデオに撮影することを禁じている。違反した場合は、最大10万ドルの罰金または最大1年の懲役、あるいはその両方が科される。

 このS.1301法案は初め2000年に提出された。米国で初のカメラ付き携帯が登場したのはその2年後のことだ。最初の法案は主に、隠しビデオカメラによるプライバシー侵害を対象としていた。

 2002〜2003年に同国でカメラ付き携帯が流行し出した後、明確にこの種のデバイスによるプライバシー侵害を対象とする文言が追加され、議会でのS.1301法案に対する関心は高まった。

 「カメラ付き携帯が対象に含まれたことで、一般市民、マスコミ、議員のこの法案に対する関心は高まってきている」とこの法案を支持するマイケル・オクスリー下院議員(オハイオ州選出・共和党)のスポークスマン、ティム・ジョンソン氏は語る。「議員らから、カメラ付き携帯についての質問や、われわれの法案にカメラ付き携帯が含まれるかどうかという質問が寄せられていた」

 上院では昨年9月に満場一致でこの法案を可決した。下院司法委員会も5月に、ほとんど反対なしでこれを承認した。

メーカーの反論

 携帯電話メーカーは、このような法律はどんなに良くても施行が難しいかもしれないし、有望な技術を抑止する可能性すらあると主張している。

 「間違った安心感を作り出すだけだと思う」とNokiaの広報担当マネジャー、キース・ノーワーク氏。「違法行為をしようという人は、常に法律を避ける方法を見つけるものだ」

 同氏やほかのベンダーは、盗撮者がデジカメなどほかの技術よりもカメラ付き携帯を利用する傾向が高いということはないとしている。「結局のところ、携帯電話のカメラと普通のカメラにはほとんど違いがない」と同氏。

 だが電子プライバシー情報センター(EPIC)の政策担当顧問セドリック・ローラント氏は、(盗撮の)機会が違ってくると語る。

 「ほとんどの人はデジカメを持ち歩いていない。カメラ付き携帯の方が興味深い画像を撮影する機会が多い。残念なことに、その中にはプライバシーを脅かしかねない画像が含まれることもある」(ローラント氏)

 盗撮者はカメラ付き携帯を使って、簡単にほかのこと(電話をかけるなど)をしている振りをしながら写真を撮れると同氏は言い添えた。

 ノーワーク氏は、いかなる新法であれ、カメラ付き携帯をやり玉に挙げるべきではなく、「画像を撮影するあらゆる技術」を対象とするべきだと主張する。ただオクスリー議員の法案は、まさにそうすることを提案するもののようだ――この法案では、私的な場所で同意なしに写真を撮られた場合、撮影に使われた技術については何ら区別しない。

 カリフォルニア州議会のサラ・レイエス議員(フレズノ郡選出・民主党)は、カメラ付き携帯によるプライバシー問題には、技術的な解決策で対処することを望んでいる。

 同議員は禁止する法律ではなく、2008年以降にカリフォルニア州で販売されるカメラ付き携帯に、シャッターを押した時に周りに聞こえる程度の音が鳴るか、ライトが光るようにする仕組みを組み込むよう義務付ける法律の制定を勧めている。

 だがNokiaのノーワーク氏はこのアイデアにも冷ややかな反応だ。「そんなことをしたら、カメラ付き携帯を悪事に使うつもりのない99%の人たちが迷惑することになる」

 同氏は先日フィンランドの結婚式に出席した際、カメラ付き携帯を使って写真を撮り、それを出席できなかった米国の友人たちにすぐに送った。「もしも私のカメラ付き携帯からビープ音が鳴ったり、フラッシュが光ったりしたら、こんなことはできなかっただろう」

盗撮者の夢のデバイス

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